山崎まどかと長谷川町蔵が語る、映画界を牽引するグレタとノアのパワーカップル論。
山崎 それでふたりは意気投合して『フランシス・ハ』(2012年)と『ミストレス・アメリカ』(2015年)を撮って、監督・脚本がノア、共同脚本と主演がグレタという体制が出来上がった。この2作はちょっと現実から数センチ浮き上がっていて空気が読めない、彼女独特のキャラクターが押し出されて、女優としてのグレタがいちばん輝くように作られている。この少し前から、ふたりがニューヨークで一緒に暮らしているって噂を聞いて「恋に落ちたんだ!」ってびっくりした記憶がある。 長谷川 ノア・バームバックはこの2作の間に、ジェニファー・ジェイソン・リーとの離婚が成立して、その経験が後に『マリッジ・ストーリー』(2019年)として昇華するわけだけど。
山崎 一方のグレタは自伝的な青春映画『レディバード』(2017年)で長編映画監督デビューして、いきなりアカデミー賞の作品賞・監督賞・脚本賞にノミネートされる。クリエイター同士のカップルで、こんなふうに相互作用して、双方の才能がスパークするなんて滅多にない。 長谷川 グレタは『フランシス・ハ』の後、女優の仕事のオファーが8ヶ月もなくて、それで自分で映画を作ることにしたらしいね。シアーシャ・ローナンを主演に迎えて、自分のオルターエゴみたいな、落ち着きのない女の子のキャラクターを演じさせているんだけど、彼女は演出家としても優秀なんだって分かった。 山崎 シアーシャは、グレタが「若草物語」に挑んだ監督第2作『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(2019年)でも主人公格のジョーを演じているんだけど、やっぱり言動がグレタっぽいんだよね。 『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』公開の同年、グレタとノアは第一子をもうける。写真はジョー役のシアーシャ・ローナン。photography: ©2019 Columbia Pictures Industries, Inc., Monarchy Enterprises S.a r.l. and Regency Entertainment (USA), Inc. All Rights Reserved.