ブラピ20億人説『総勢何人《全員で何人か本気で数えました》』/テレビお久しぶり#120
長らくテレビを見ていなかったライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は『総勢何人《全員で何人か本気で数えました》』(テレ東)をチョイス。 この世には家が多すぎる『有吉ジャポンII ジロジロ有吉』/テレビお久しぶり#119 ■ブラピ20億人説『総勢何人《全員で何人か本気で数えました》』 30歳以下の若手プロデューサー5人が、毎週月曜日にそれぞれ渾身の企画を放送する『トライアルマンデー』。9月9日の月曜日に放送されたのは、ある人数を数え上げるという一風変わった番組『総勢何人』。南海キャンディーズ・山里亮太と伊原六花が出演し、普段当たり前のように目にしているモノに、一体どれだけの人間の気持ちが詰まっているのかを目の当たりにしてゆく。今回のテーマは、スシローの真鯛ずし一貫ができあがるまでに関わった人数、公衆電話の一日の利用人数、終電から始発まで、東急東横線の整備にあたる人数の3つだ。 とにかく人数を数え上げる番組である。出演者は2人(+ディレクター)のみ、スタジオは白い空間、VTRは最大限に見やすく編集されていて、私はこういう、シンプルかつストイックな番組が好きだ。ひとつのテーマに絞って、それに突き進むような。ジャンルに徹した娯楽映画を『ジャンル映画』と呼ぶように、こういう番組群を『ジャンル番組』と呼んでもいいかもしれない。 さて、私も普段生きていて、人数を気にすることが多い。私は、街に出たとき、一体何人の人間が私のことを見たのだろうかと考える。人の視界に入る、ということが、自分の存在を更新してゆくという感覚があって、だからこそ、人に見られたい、という欲求が生まれ、そこから美意識が生まれ、承認欲求が生まれ……という風に私は完成している。たとえば渋谷に行くとする。そこで、おおよそ2,000人の視界に入るとする。そのとき、私の数も2,000人になる。10,000人に見られれば、10,000人になる。ブラピなんて全世界で20億人くらいには知られているだろうから、ブラピの数は最低でも20億人だ。 このように、自分の人数を、端数まで知ることができたら……。ある一日のうち、自分のことを見た人間の数を数えてみる、というのは面白いかもしれない。そして、そんなことはとうてい不可能だと思い知り、その途方もなさが、自らの”存在の多さ”を裏付けていて、嬉しかったり、ちょっと怖くなったりするのだろう。個々の生命体がそれぞれ内蔵している精神世界まで含めると、この宇宙はあまりにも、あまりにも広いのだ。 ■文/城戸