「非行少年たちとの出会いが人生を変えた」組織や立場を超えた多様な人々を繋ぐ場を作る理由とは
プロジェクトチームのリーダーに抜擢
2015年、財務省から香川に戻った寺西さんは、職場で立ち上がった地方創生を支援する若手職員のプロジェクトチームのリーダーに抜擢される。そこで、地方自治体の若手職員と対話を重ねる中で、他の自治体との横の繋がりの無さや、本音で未来を議論できる場が無いといった共通の課題が浮かびあがり、2016年12月に若手公務員60名を集めたフォーラムを開催した。しかし、同じ公務員だけで固まることへ違和感を抱き、内閣府主催の「地方創生☆政策アイデアコンテスト」に若手職員と香川大学生のチームで応募し優勝。必要なものは肩書きやスキルではなく、情熱だと気づいたという。こうした経験を通して組織外の交友関係が広がっていった寺西さんは、自分にしかつくれない、異質な人たちと対話や交流をする場をつくりたいと思うようになった。 「2019年7月9日に、高松市で80名を集めて交流会を行いました。名付け親はことでんグループの真鍋代表です。実は、当初はオープンイノベーション地域交流会という長い名前でした。そこで、真鍋さんが「寺西くんがやろうとしていることはロックなのだから、会の名前を寺西ロックフェスティバルで『テラロック』でいいんじゃない」と提案いただいたのです」 テラロックは2019年以降、まちづくり、働き方、観光、金融、挑戦などのテーマを設け、学生から経営者まで多様な分野と世代の人々が出会い対話する予定調和の無い場が生まれてきた。派生企画も含めると約200回のイベントを通して8000名以上の方々と寺西さんは出会ってきた。この人々との繋がりが、現在の東かがわ市での仕事にも繋がっている。 「テラロックを通して様々な挑戦者たちと出会いました。そういった方々は事業を起こす人々が多い。それで私自身も官民連携を通してそういった方々を支援したいと思いましたし、行政としても私の繋がりをいかして官民連携の窓口を任せようと思ったわけです。テラロックと公務員としての役割は切り離せないものです」 近年、場づくりへの考えが変化しているという寺西さん。これまでは自らが主催・登壇し熱狂を生み出していたが、ふと登壇者と聴講者の役割を固定化させ、固定観念を揺さぶることを目指しながら固定化された関係性を生み出していたことに気づいたという。 「これからは、登壇者と聴講者という区分を壊し、誰もが対話の主役になることで互いの熱が伝播するような場を作っていきたいと思います。先日、高知県内の自治体職員向け研修で受講生らによるトークセッションを取り入れたのですが、自らが話すというゴールに向けてより主体的積極的に参加する受講生の姿が印象的でした。また、今後は主催だけでなく既存のコミュニティにもっと飛び込んでいきたいとも思います。徳島県の女性中心のコミュニティに研修講師として呼んでいただいたのですが、知的好奇心の高さや育児・家事で磨いたスキル、社会に対する課題意識などが非常に新鮮で印象的でした。もっと自分が出会ってこなかった人々と出会い、いままで生まれなかった対話から価値観の変容を起こしたいと思っています」 自分の近くの課題から取り組み、関わる人々の輪と多様さを広げてきた寺西さん。彼がつくる場からは数々の挑戦者が生まれてきた。これからも、異なる価値観を持った人々との対話とコラボレーションを公私に関わらず取り組んでいく寺西さんのチャレンジに目が離せない。
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