「非行少年たちとの出会いが人生を変えた」組織や立場を超えた多様な人々を繋ぐ場を作る理由とは
幼少期から要領のいいタイプ
1985年に香川県高松市でうどん屋の息子として生まれた寺西さん。ご自身曰く、要領のいいタイプだったという。就職活動を経て金融機関や民間企業の内定を獲得したが、内定者交流会で同期の野心の強さにギャップを感じ、民間ではなく他者への価値提供に専念できる職業として公務員が向いているのではと感じた。そこで急遽公務員試験を受け、財務省四国財務局に採用された。そんな寺西さんだが、20代中盤で東京の財務省へ出向し主計局で予算編成をしていたときに転機が訪れる。 「国立の児童自立支援施設の予算を担当していたのですが、それがきっかけで実際にある施設を訪問するようになりました。そこで重たい非行のあった少年たちと出会いました。これまでまったくそのような人たちとは接したことがなかったので、当初は自分とは別世界だと感じ、正直怖いと思っていました。ですが、実際に会ってみるとみんなで運動をしたり勉強をしたり、ごく普通の身近にいる子どもたちのように感じられました」 「生まれながらに非行に走る子どもはいない。すべては環境がつくる。少年たちの世話をする夫婦が語った言葉に大きな衝撃を受けました。私はこれまで自分にとって居心地が良い世界しか見てこなかった。そして、多くの人や事象を自分の思考の外に置いていたのだと気づきました」 このままの生き方ではだめだと強く感じた寺西さん。しかし、何をすればいいのか見当がつかなかった。そんな中思いを巡らすと、自分にきっかけを与えた人々は、自分と価値観や見えている世界が異なる人々だった。しかし、職場と自宅を往復する生活ではそのような機会は得られない。直感的に「組織の外へ出なくては」と感じた。 「あまり高くないモチベーションで生きてきた人生を変えてくれたのは、近くにいた人ではなく非行少年たちでした。価値観の離れた人々が対話をすることで社会が変わる。そういう価値観が離れた人々が共存して対話する場に大きな意義があると思いました」