総体優勝直後のU-18代表で味わった悔しさをバネに。昌平のキャプテン大谷湊斗が成長を示す値千金の決勝弾
相手選手から脇腹を殴られるような場面も
今から約1か月前、最高の笑顔を見せていた。主将を務めるMF大谷湊斗(3年)は、夏のインターハイで昌平初の全国優勝に貢献。とりわけ素晴らしかったのは、帝京長岡との準決勝(2-1)だった。強烈なミドルシュートを含む2ゴールの大活躍。“巧いプレーヤー”から“怖さ”を出せる選手に変貌を遂げたことを印象付けた。 【画像】堀北・ガッキー・広瀬姉妹! 初代から最新19代目の藤﨑ゆみあまで「歴代応援マネージャー」を一挙公開! 総体でのプレーが評価され、8月22日から25日にかけて開催されたSBSカップ国際ユースサッカーに出場するU-18日本代表のメンバーに選出。しかし――。ボランチやサイドハーフで起用された大谷は思うようにプレーができず、自身の未熟さを思い知った。 「自チームと違い、自分にボールが集まってくるわけではない。オフの動きは全然足りず、歩いてしまう時間帯も多かった。もっとオフの質を高めて、ポジショニングは考えないといけない」 昌平であれば、自分がゲームをコントロールし、絶対軸として3列目やトップ下のポジションからアイデアを出せる。だが、代表は違う。同年代でトップレベルのプレーヤーが集まる場所であり、簡単に自分が中心になれるわけではない。 「最後のアルゼンチン戦は自分のプレーを多少出せたので良かった」としつつも、ギャップに戸惑い、3試合を通じて本来の良さは出せずに終わった。 だが、その体験を無駄にするわけにはいかない。 「SBSカップは経験になった。世界の強国はもっとサッカーに対して真剣だし、本気でやっている。そこを基準にしたい」 たとえば、アルゼンチンとの最終戦。大谷はプレー中に何度も敵と激しくやりあった。並走している際に相手選手から脇腹を殴られるような場面もあったという。 もちろん、審判から見えない場所でファウルをしていいわけではない。だが、それぐらいの覚悟を持って勝負に挑んできている相手の本気度は、国際舞台でしか味わえない感覚だった。 大事なのはこの経験を持ち帰り、自分の成長にいかに繋げていくか。今夏にインターハイ優勝という成果を上げたため、昌平に対する注目度やマークは厳しくなり、今まで以上に勝利を掴むのは難しくなる。さらにチームでは日本一を成し遂げたことで、夏休み期間中は少なからず、フワっとした雰囲気が漂っていた。 メンタルコントロールが難しい状況下で大谷は仲間たちに声をかけ続け、どんな状況でも勝負に徹する重要性を仲間に説いてきた。ただ、言葉だけでは説得力は薄れてしまう。だからこそ、大谷はプレーでも表わす必要があった。 9月14日に行なわれたU-18高円宮杯プレミアリーグEASTの第14節・尚志戦。1-1で迎えた終了間際の82分だった。FW鄭志錫(3年)からゴール前でラストパスを受けると、冷静に左足で流し込む。 チームを勝利に導く逆転弾に、「自分もインターハイ以降、ゴールを取っていなかったので欲しかったんです」。頬を緩ませた大谷だが、勝負にこだわる姿勢を誰よりも示す得点だった。 元日本代表で2度のワールドカップ出場経験を持つ玉田圭司監督も「ピッチ内での責任感は増してきている」と、大谷に対して賛辞を惜しまない。全国優勝を経て、味わった世界との差は確実に自らの力になっている。優勝の可能性を残しているプレミアリーグはもちろん、最後の選手権で最高の結果を残すべく、大谷の挑戦に終わりはない。 取材・文●松尾祐希(サッカーライター)