オカダ・カズチカが語る、新日本プロレスでの“新弟子”の仕事
日常にもエンタテインメント性を意識する
ちゃんこをうまくつくれても、強いレスラーになれるわけではない。しかし、プロレスは格闘技であるだけでなく、エンタテインメント性も大切だ。強さと同じくらい華も必要だと思う。質の高いエンタテインメントは注目される。いい試合をすればプロレス会場にお客さんは集まる。 同じように、ちゃんこがおいしければ、自宅暮らしで通ってきている先輩たちも道場で食事をしていく。OBの方も食事をされるので、一緒に食卓を囲める。エンタテインメントだ。 ごく日常的なルーティンにも楽しみの種子を見つけて、エンタテインメント性を意識する。たとえやらされることであっても、創意工夫次第で楽しくなってくる。 僕が寮にいるころは山本小鉄さんがご存命で、ちゃんこの席でプロレスについていろいろ教えてくださった。 小鉄さんは力道山が設立した日本プロレスに入門し、アメリカでは星野勘太郎さんとのタッグチーム、ヤマハ・ブラザーズで活躍した。ヤマハ・ブラザーズが転戦したのはテキサスやテネシーなど、人種差別が激しく反日感情の強いアメリカ南部。よほど肝が据(す)わっていたのだろう。新日本プロレスには設立時から参加し、レフェリーや道場長も務めたレジェンドだ。 その小鉄さんがいつも僕のちゃんこに点数をつけてくれた。 「小鉄さん、今日のちゃんこは何点ですか?」 「うん! 80点だな」 「ありがとうございます!」 そんな会話をしていた。 いつもいい点をくれたことが懐かしい。
TEXT=オカダ・カズチカ