唯一無二の景観、石段を上りきった先には本殿ではなく線路が!? 陶山神社/佐賀県西松浦郡有田町
津々浦々の神社・仏閣を訪ね歩くことを趣味にしているライトノベル作家の森田季節さん。全国に約16万もあるという神社・仏閣の中から、知見を生かしたマニアックな視点で神社・仏閣を紹介! あなたをめくるめく寺社探訪の旅に招待します。興味を持った方はぜひ現地に訪れてみよう。 ■石段を一段一段進んでいくとそこには・・・ 有田焼で著名な有田町に陶山神社はあります。明治21年(1888)に寄進された国の登録有形文化財の磁器製の鳥居が美しい神社ですが、ここにはそれ以外にもものすごく特徴的な要素があります。 それが神社の参道をぶった切るJRの線路! 参道が線路で分断されているタイプの寺社は各地にあって、撮影スポットになってるような場所もありますが、陶山神社はことさら強烈です。 まず、踏切に遮断機がありません。それぐらいならほかにも類例があると思われるかもしれませんが、この神社の場合、石段を上がりきった直後に線路があります。石段を一段一段進んでいくと、突如開けた視界に線路が現れて衝撃を受けます。もし何も知らない人が石段を駆け上がって神社を目指した場合(そもそも参道を走るべきじゃないですが、それはそれとして)、列車にぶつかるリスクもありそうで大丈夫なのかと心配にもなる立地ですが、遮断機はなくても警報機は設置されているので大半の人は踏切の存在にも気づけるようです。 神社側からすれば土地の一部を鉄道側に侵食されているわけですし、警報機があるとはいえ踏切での事故のリスクも増えるので、歓迎されているのかは正直なところ不明ですが、この踏切のおかげで唯一無二の景観になっているのは間違いないです。 実際、自分も有田旅行で一番に思い出すのはこの神社の踏切を通過する特急車両です。二番目が最初に紹介した磁器製の鳥居です。色味があるといってもたいていが朱色の神社で、普通は目にすることのない青色顔料の呉須がこうも映えるものかと驚かされます。境内にはほかにも磁気製品の灯籠や、本殿の磁器製玉垣など記憶に残る景観が随所にあります。 ほかにも有田は煉瓦の廃材などを利用したトンバイ塀の街並みや、豆腐とプリンの間みたいな食べ物の「ごどうふ」など、磁器に何の興味もない人でも楽しめる要素が集まっていて、重要伝統的建造物群保存地区に指定されている観光地の中でも、とくにおすすめしたい場所です。
森田季節