赤字常態化の3セク鉄道「危機のレベル変わった」…沿線自治体「離脱したいという話も出てくる」
住民や観光客の「足」として地域を支えてきた各地の「第3セクター鉄道」が、岐路に立たされている。人口減にコロナ禍や物価高が重なり、自治体による赤字補填(ほてん)も限界に近づいているためだ。福岡県を走る平成筑豊鉄道もその一つ。県の主導で将来像を探る検討が始まるが、存続のための代替案には課題も多く、着地点は見通せない。(手嶋由梨、小山田昌人) 【写真】九州の主な第3セクター鉄道と、そのうちの赤字路線
「レベル超えた」
「『ちょっと厳しいな』というレベルを超えた」。10月末、地域公共交通活性化・再生法に基づき、同鉄道の経営改善策を考える「法定協議会」の設置を福岡県の服部誠太郎知事に求めた田川市の村上卓哉市長は苦渋の表情を浮かべた。
石炭輸送のために敷かれた旧国鉄の鉄路約50キロを継承し、1989年に開業した平成筑豊鉄道だが、沿線の人口減とともに乗車人数は1日平均3320人とピーク時の3分の1に落ち込んだ。現在は年2億~3億円の赤字が常態化している。
厳しい経営を助けてきたのが、沿線9市町村の助成金だ。2020~22年度は2億4000万円、23年度には3億円を投じた。ところが、近年の燃油高の上昇を受け、今年度はさらに1億5000万円を追加する予定で、何とか資金不足を逃れる筋道を立てた。
ただ、線路や車両の更新時期が訪れる26年度以降、赤字額は毎年10億円前後まで膨らむ見通しだ。河合賢一社長は「コロナ禍で乗客を失い、災害も頻発している。苦しさの『質』が変わった」と吐露する。
県は、法定協を今年度設置する方針だが、市町村側も一枚岩とは言えない。首長のひとりは「懐具合が違う。負担に応じたメリットがない地域からは、離脱したいという話も当然出てくるだろう」とみる。
乗客の半数を占める学生の間では、すでに動揺が広がっている。同県福智町の高校1年の男子生徒(16)は「バスはないし、自転車では遠い。なくなったら、通学が難しくなる」と話す。
コロナ禍が拍車
全国41社が加盟する「第三セクター鉄道等協議会」(東京)によると、加盟社の9割にあたる37社が昨年度決算で経常赤字に陥ったという。19年度時点では33社で、コロナ禍が各社の経営難に拍車をかけた形だ。