レッドブルF1更迭か、あるいは勇退か……崖っぷちペレスに迫られる”決断”
■ペレスの決断次第で、その最後が変わる?
ただレッドブルとしては、ペレスとの仕事を続けていくことを望んでいたはずだ。なぜならば、契約を途中で解除することとなれば、その違約金が非常に高額となる可能性があるからだ。また前述の通り、ホーナー代表は角田を起用することには消極的であり、ローソンはまだF1での経験が10戦のみ……もう1年RBのドライバーとして走り、経験を積んだ方が理想的だったはずだ。 しかしペレスの今季ここまでの獲得ポイントは152。フェルスタッペンが429ポイント獲得しているのと比較すれば、起用し続けるのは難しい。そしてカタールGPでも、懸念を払拭するために何もできなかった。 全てはカタールGPの土曜日から始まった。前日のスプリント予選でSQ1敗退を喫したペレスは、F1スプリントに向けてサスペンションのセッティングを変更したため、ピットレーンからのスタートとなった。 しかしペレスは、ピットレーン出口のシグナルがグリーンになった後もなかなか走り出さず、同じくピットレーンスタートだったコラピントに抜かれた。このシーンは、SNS上で多くの非難を浴びた。 これについてペレスは、決勝に向けたセットアップを”クリーンエア”で試すため、スタートを遅らせたのは意図的だったと説明した。たしかにこの説明は、彼の車載カメラ映像によっても裏付けられている。ペレスは故意に後方を走り、テストの準備をすべく、ジグザグに走行している様子も見えた。 ただ不思議なのは、ホーナー代表がこのF1スプリントでのテストについて、ほとんど語らなかったことだ。ペレスの発言について問われたホーナー代表は、「我々が理由があって、コラピントよりも7分早くピットレーンの出口に彼を送った」と説明。これはペレスの説明とは矛盾しているように感じられ、混乱を引き起こすことになった。 決勝レースでペレスは、セーフティカー走行中にスピン。隊列に戻ろうとした際にクラッチにトラブルが起き、リタイアとなった。ホーナー代表はこれについても、「我々が置かれている状況は、彼にとってもチームにとっても辛いものだ」と語るだけだった。 ペレスはスピンの後、無線で「ドライブを失った」と伝えたが、チームとしてはすぐに問題の原因を認識することができなかった。そしてホーナー代表は、次のように語った。 「我々は正確な故障の原因を調査しているところだ。どうやら彼はマシンをスピンさせてしまい、クラッチを切ったところでクラッチに過度の熱が加わってしまったようだ」 2024年は厳しい1年になった。その状況をペレスも認め、次のように振り返った。 「これ以上良くなることはない。間違いなく、今回のスプリントイベントから多くのことを学んだと思う。見ていて素晴らしいイベントだった。そのことから、我々が分析し、マシンから理解すべきことがたくさんあると思う」 ペレスは確かに、パフォーマンスの面では苦しんでいる。しかしその一方で、献身的な姿勢は評価されるべきものであり、レッドブルもそれは認めている。その典型例が、カタールGPのF1スプリントである。 ペレスは自ら進んでセットアップを詰めるためのモルモットとなった。そのF1スプリントでは、フェルスタッペンをもってしても、ハースを攻略することすらできなかった。しかしペレスの貢献によりチームは勢いを取り戻し、決勝レースでは優勝を手にした。フェルスタッペンがドライコンディションのレースで勝ったのは、6月のスペインGP以来のことだった。 カタールGPでのペレスの貢献は、チームを離れる前の最後の偉業だったのだろうか? ひとつハッキリしているのは、ペレスが今週、自らの判断で退くことを決断すれば、レッドブルは偉大な英雄としてアブダビGPに送り出し、フィニッシュ後にはテレビを通じて、何百万人もの視聴者を前に盛大なセレモニーが開かれることになるだろうということだ。 しかし、月曜日の予定されている会議、そして株主の判断に委ねることになれば、ペレスはF1からひっそりと去っていく……ということになるかもしれない。
Christian Nimmervoll