筋肉が動かなくなる難病「ALS」と闘う小学校合唱部の先生 葛藤のなかで子どもたちと挑んだ最後の大会 【福岡発】
全身の筋肉が徐々に動かなくなる難病と闘う小学校教師が福岡・北九州市にいる。さまざまな葛藤を抱えながら子どもたちと向き合う日々を追いかけた。 【画像】筋肉が動かなくなる難病ALSと闘う小学校の先生 教師 葛藤のなかで子どもたちと挑む最後の大会【福岡発】
葛藤を抱えながら子どもたちを指導
市立日明小学校合唱部。2024年9月に行われた九州大会で「金賞」を獲得し、3年連続で全国大会への切符を手にした県内屈指の強豪だ。竹永亮太先生(35)は、その合唱部の顧問を務めている。合唱部の目標は全国大会で金賞を獲ることだ。 「先生がいるからこそ合唱が楽しくなるし先生が大切な存在」(小6・男児)と子どもたちから大人気の竹永先生なのだ。 しかし、竹永先生、実は難病と闘う日々が続いている。「階段の上り下りが以前に比べてきつくなってきた」と闘病の一端を口にする竹永先生。葛藤を抱えながら子どもたちの指導にあたっているのだ。 竹永先生を苦しめているのは、国指定の難病「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」。呼吸や手足に必要な筋肉が、徐々に痩せて力が失われていく。診断されたのは7年前だった。根本的な治療法はなく、進行すると24時間の介護が必要になる。
4世代に渡り難病ALSと闘う
この日は「ALS患者とその家族の交流会」の日。全国から約50人が参加した。交流会の目的は、当事者どうしでしか話せない悩みや苦労について共有すること。「最近になって死ねばよかったとか言い始めて、とても今、また苦しい状況にあります」と語るのは10年前に家族がALSを発症した女性。思いは切実だ。 竹永先生の母親の秀美さんも27年前にALSを発症。現在は車椅子で闘病生活を送っている。竹永先生はALS患者のなかでも僅か1割しかいない「家族性ALS」と診断されている。遺伝する確率は約2分の1。亡くなった曽祖父と祖父、そして母親と4世代にわたりALSと闘っている。
結婚生活でもさまざまな葛藤
竹永先生の妻、三央さん。7年前に竹永先生がALSの診断を受けた後に2人は結婚した。「進行が進むと、壁にぶつかることもあると思うんですけど、ご両親が介護の経験をされていらっしゃるので、相談しながら頑張っていけたらいいなと思っています」と三央さんは静かに語る。 「妻は子どもが欲しいと思ってたんですよね。しかし自分はやっぱり不安がありました。子どもが大きくなる頃には、この病気が治る病気になって欲しいなと思うけど、でもそれが決まったわけでもないし、だからあまり前向きには考えられないところもあったかな」と複雑な胸中を語る竹永先生。将来、自分の介護と子育てが重なり三央さんの負担が大きくなるのではないか。不安が竹永先生の表情を暗くしてしまう。 そんな竹永先生にとって、家族と同じくらい大切な存在となっているのが、合唱部の子どもたちだ。「本当に病気のことを忘れて取り組める」と合唱に打ち込める時間を大切にしている。