食堂経営からスキー場経営へ スノーリゾート界の風雲児 ー株式会社マックアース
異常さを物語るこんな数字も教えてくれた。「当時は世界で500万台生産されたスキー板が日本で300万台はけていたっていう、ホントに恐ろしいことが起こっていたんですよ」。今、日本のスキー板の販売数は約50万台と言われている。 「適正だと思います。ヨーロッパや北米と人口の割合で考えて、スキーが滑れるエリアというのも入れて計算すると、ざっと8000万の人が対象と考えれば、50万という数字は普通だなと。それにプラス、スノーボードも販売されていますからね。合わせれば、日本でも結構な率で、まだウィンタースポーツの用具が普通に売れているレベルかなと思いますね」と、一ノ本氏は見ている。「あの頃が異常だっただけで、世界的に見ても落ち込んでいるわけではないですね。こんなもんじゃないかと思います」。全く悲観する数字ではないそうだ。「ただ」と付け加える。「もうちょっと流行らせたいですけどね」。ポツリとつぶやいた。 ■実は身近な日本のスキー場 日本にとって、今後スキー産業はどうなっていくのか。実は世界から見ると、日本のスキー場は“おいしい”マーケットなのだと一ノ本氏は語る。それはスキー場の立地にあるという。 「空港や生活圏からの距離ですね。独自の文化を体験しながらウィンタースポーツも楽しめる。そういう立地の国って、世界でもあまりないんです。(他国は)寒々たる岩山を登って行った上にリゾートがあるというようなところが多いので。生活圏に近いところにスキー場があって、文化と共に売れるスキー場って日本の特色だったりするので、それはしっかりと売っていくことが大事なんです」。 日本の主要都市からスキー場はそう遠くない。「たとえばパリから最寄りのスキー場って4~5時間かかるんですよ。車で行きゃ8時間とか。それが日本では東京から1時間で越後湯沢ですし、大阪からも最寄りのスキー場に1時間半。名古屋からは1時間でダイナランドとかデカい山があるんですよね。札幌なんか2~30分で行けちゃうし。仙台だって30分ありゃスキー場があるんです。こんな国ないですからね」。立地という面では、日本のスキー場は非常に魅力的なのだ。 だから、国内のスキー人口開拓とともに、海外にも目を向ける。「今、インドのお客さんなんか、ヨーロッパのマーケットとか狙っているんで、いかにそのへんから日本に来てもらうかというのを真剣に考えているんですよ」と明かす。「インドからだと、日本に来てもヨーロッパに行っても、だいたい等距離なんですよね。飛行機の時間距離でね」。 ただそこで問題なのが広さだ。「日本の一番デカいスキー場って、ニセコ(北海道)のスキー場4つ全部繋いで480haなんですよ。志賀高原が440ha。フランスで一番デカいトロワバレーというのが5000haありますから、10倍なんですよ。そりゃ日本はヨーロッパが真剣に向かってきたら勝てない。でもそこと勝負しなきゃなんないわけです」。