Z世代の「不安型離職」は本当に増えているのか 「不満はないが不安」で若者が辞める会社の結末
改めて、Z世代を部下にもつ上司たちに、こんな声掛けをして、どうなるだろうか。 「若手社員は不安らしいから、きみ、なんとかしておきなさい」 「不安型離職が増えてるらしい。早急に1on1とかでケアしておいて」 「会社としてはできることはやっている。離職が起きたら君のせいだぞ」 最悪のオチは、こんな話になることだろう。 「不安型離職」の記事を読んだお偉いさん、びっくりする。なんだ、Z世代ってこんなことになってんのか。まったく、近頃の若いもんは。困ったなあと思いつつ、部下の中間管理職を呼び出して、キミ、なんとかしておいてくれよ、と伝える。
まあ、今までも忠実に仕事をこなしてきたし、コイツならなんとかしてくれるだろう。雑な信頼を寄せて命令した、数か月後。辞表を持ってきたのは、なんと管理職の方だった。 「すみません、今の仕事に不安があって…」 これはただの創作だし、笑い話のようなものかもしれない。ただ、Z世代「だけ」が何か特別な性質をもっていて、だから誰か――だいたいは管理職――がどうにかすればよい、といった考え方をもつことは、会社組織として、危険な発想だと言っておきたい。
舟津 昌平 :経営学者、東京大学大学院経済学研究科講師