Z世代の「不安型離職」は本当に増えているのか 「不満はないが不安」で若者が辞める会社の結末
実は、職場環境の不満に関する指標は、様々な面で良くなっていることをご存じだろうか。たとえばハラスメントは、実はある時期まで必ずしも「違法」ではなかった(違法じゃないからやっていいという意味では断じてない)。しかし、2020年6月の「改正労働施策総合推進法」、通称ハラスメント防止法の施行によって、法的にも社員を保護できるようになった。 またリクルートワークス研究所が行った調査において、職場に対する量的な不満(仕事が多い)、質的な不満(仕事が難しい)、関係的な不満(人間関係が悪い)のいずれもが、この20年で改善されていた。特に量的負荷の代表である労働時間は、ざっと月に5.2時間減少していた。これは残業時間の減少量にほぼ等しい。
つまり、この20年で職場は良くなっている。不満は確実に減少しているのだ。SNSやメディアに浸かっていたら、なんだか日本は悪くなり続けてるような感覚に陥ることもある。良くなっていることを探して認めるのは大事なことだ。 が、しかし。ある指標については、悪化傾向がみられる。「職場への不安」である。 職場に対して不満はないけど不安を感じ、会社を辞める。リクルートワークス研究所の古屋星斗氏は、この現象を著書などで「不安型離職」と表現する。
そして実はこの不安型離職は、職場が「良くなった」ことが一因でもあるという。 典型例を考えよう。イマドキの職場は優しい。叱らない。遅刻してもミスしても、そうかそうか、と言って上司は許してくれる。しかし、そこで若手社員は考える。こんな「ゆるい」職場じゃ、自分は成長できない。もっと成長できる場がほしい。 だって、こんな職場じゃ、「ヨソ(他社、他部署)では通用しない」。ゆるい職場環境ゆえに成長への不安が喚起され、ヨソで通用しないと考えるようになる。これを「ヨソ通」問題と呼ぼう。
本当に不安型離職が起きているのであれば、会社にとってはなかなか難題である。イマドキの若者は叱ったら萎縮してやる気をなくすよ、って聞いていたから叱らないように気をつけていたのに、叱らないなら叱らないで、ヨソ通問題で不安を感じてしまうというのだ。どうすりゃええねん、という話である。 ■不安型離職は「増えている」のか? 不安からくるヨソ通問題に真正面から答える前に、2つほど考えておきたいことがある。まず、この記事内でも誤読が起きかねないのは、不安型離職なるものが起きているとして、それが「増えているのか」という点である。