Z世代の「不安型離職」は本当に増えているのか 「不満はないが不安」で若者が辞める会社の結末
もちろん起きる前に対応するアジリティは必要だ。でもそれが経営の難しいところで、ときにはやらない勇気も求められる。 ■みんなちょっとはやっぱり不安なんだな もう1つ気をつけたいのは、仮にZ世代の不安型離職が増えているのだとして、「非」Z世代の「オトナ」は、何をすべきなのかということだ。 不安型離職という概念が提起され、世に広まり、対策が叫ばれる。うちの会社でも話題になっている。経営陣は、部下の中間管理職に厳命する。
「不安型離職というのが流行っているらしい。若手社員は不安を感じている。対策を頼んだぞ」 さて、中間管理職は、何をすべきだろうか。 話変わって、昔、大学スポーツのコーチをしている人が、声を震わせて吐露するのを聞いたことがある。 「40歳男性が、20歳の女子大生と話すのがどれだけ辛いかわかるか」 年の差は「怖い」のだ。というより、不安なのだ。いわゆるハラスメントにならないかとか、変なこと・嫌なことを言っていないだろうかとか、本当に自分を受容して、前向きに部活や仕事をしてくれるだろうかとか、マジメな人ほど不安を抱えるようになる。下心とかマウントとりたいとか、そんな気持ちは一切なくて、だからこそ迷い、不安に襲われる。
若手社員が不安だって? こっちだって不安だよ、と管理職も言いたいことだろう。 ■ミイラ取りがミイラになる未来 Z世代だけが不安型離職をする(らしい)から、Z世代の性質を究明して、対策を練っていこう。新入社員はエイリアンで、自分たちにとって理解不能なことをするに違いなくて、怖い。そう思った瞬間、相互理解からは遠ざかっていく。色々違いはあるだろうとはいえ、雑に言えば同じ人間なわけだから、共通項もたくさんあるはずなのに。
「若手社員の正体」を探ろうとするのは、まだいい。それが多少偏見や誤解を含むものであっても、まあ理解なんてそんなものだ(誤解なくして理解なし)。しかし決定的に危険なのは、若者「だけ」がそうであって、自分たちはまったく関係ないとか、安全圏だと過信してしまうことだ。 若者の困った性質をハックして誰かに対応を命じておけばどうにかなるのだと、「若者をそうさせているもの」を完全にコントロールできるのだと思ってしまうのは、とても危険である。