Z世代の「不安型離職」は本当に増えているのか 「不満はないが不安」で若者が辞める会社の結末
ここでクイズを出したい。大卒の早期離職率(新卒入社後3年以内に離職する割合)、をご存じだろうか。要は、大卒の新入社員が3年以内に辞める割合、である。答えは「ほぼ3割」だ。ちなみに高卒はもうちょっと高くて、4割前後くらい。 では次の問題。早期離職率は、10~20年の間にどう変化しているだろうか。雇用の流動性の高まりとか、不安型離職といった情報を加味すると、「増えている」と思う人が多いのではないだろうか。
答えは「変わっていない」だ。厚生労働省によると、昭和62年からのざっと30年間で、最小で23.7%、最大で36.6%。「1.5倍」みたいな言い方はできるものの、まあ、ほぼ変わっていない。特筆すべきは、2010年から2020年の11年間は、31.0%から32.8%と、抜群の安定感で推移している。 「コロナ禍元年」の2020年も32.3%で、まだ2年ぶんしかデータのない2021年は2年目までで24.5%。単純計算すると3年目で36.8%くらいなのでここ10年にない高さではあるものの、まあ、たいして変わっていない。コロナ禍並の社会危機をもってしても、そこまで変化がない不思議な指標である。
で、だとすると、Z世代の「不安型離職」は増えているのだろうか。 たとえば大企業(1000人以上の企業)の離職率が微増している、といったデータもある。大企業はやはり安定感があるのか、早期離職率は全体と比べて5~10ポイント程度低く、ただ徐々に離職率が高まっている。職場環境が良くなっているのに早期離職率はほぼ変わっていなくて、大企業でも微増している、というのがデータ上は正確であろうけども、正直、現状はそこまで大きな変化はないのである。
何が言いたいのかというと、不安型離職なるものが世に出現したとしても、別に「急増」しているわけではない。将来もっと増えていくかもという予想は可能だが、早期離職率は30年間ほぼ不変の指標だ。これは本当に、対策が急がれることなのだろうか。 現代では、会社を惑わせるビジネスが跋扈している。「不安型離職が急増しています、あなたのとこも対策しないとヤバいですよ」とささやく人々が、今後確実に、たぶん離職者よりも高い割合で、増えていくだろう。