「本来なら泣いてはいけない立場」NHKの顔・桑子真帆の度胸と愛嬌、カメラの前でこぼれた涙
思ってもみない人生「化粧品を売っていたかも」
数々の番組で活躍する桑子だが、生粋のアナウンサー志望ではなかった。就職活動では、化粧品会社、百貨店などにも応募。マスコミで受験したのは、アルバイトをしていたNHKのみだ。そんな彼女が、紅白歌合戦の総合司会を務め、「NHKの顔」と評されるまでに成長する。 「ディレクター志望で面接を受けた人が、『この人はアナウンサーのほうが向いている』と判断されて、採用された例もあります。私自身も、思ってもみない人生になりました。学生時代の自分に声をかけるとしたら、『なんでもいいから、やってみなはれ!』ですかね」 キャリアのスタートは長野放送局から。特に思い出深いのは、高校野球のラジオ実況。苦手意識があったため、あえて手を挙げた。 「まずルールがわからない(笑)。勉強してわかったところで、リポートできないんですよ。プロ野球中継を見ながら、上司には毎晩のように実況の訓練に付き合ってもらいました。本番では、ほぼ解説の方の話を聞いて、質問をしていただけ。実況じゃなくて、まるでインタビュー。苦い思い出だけど、挑戦したからこそ、この仕事の奥深さを知ることもできました」 その後は広島放送局を経て、東京へ。ゴールデンタイムのニュース番組にも起用され、着実に力を蓄えてきた。どんなニュースも安定して伝え、バラエティーではタレントとのやりとりも軽妙にこなす。 「いやいや、いまだに、自分自身に足りないところが多いなと。生放送はまったく慣れない。毎回ものすごく緊張するし、反省ばかりでクヨクヨと。そんなふうに見えないと言われるんですけど(笑)」
ネットの反応「傷ついています」「でもそれでいい」
日々、SNSやネットニュースの声にも向き合う。 「今やネットニュースは日常ですよね。世の中の人たちはどういう関心を持っているのかということも含めて、かなり参考にしています。自分についてのコメントも見ますよ。やっぱり、伝えたことがどう届いているかは気になりますから」 フロントに立つ人間だからこそ、攻撃を受けることも多々ある。 「どんな反応でも避けません。へこんで、なんとか上がって、またへこんで。でも、いいんじゃないですか、それで。傷ついていますけどね、そう思わないとやっていけないです(苦笑)。キャスターが何を言うかで受け取られ方がまったく変わることもありますから、反応を受け止めて、時には正していく必要があると思っています」 彼女の「強さ」は、どこから生まれるのだろう。 「“弱さを知る”ということでしょうか。番組のインタビューで昨年、ボクシングの村田諒太さんが印象的なことをおっしゃっていました。人として強くなることを桜の木に例えて、『きれいな花に目がいきがちだけれども、大事なのは幹の部分。幹がしっかりしていれば、今年花が咲かなくても、来年、再来年に咲くかもしれない。幹を強くするためには、地面の下の見えないところで、しっかりと根を張ることなんだ』と。これはものすごく腑に落ちました」