【文理融合】「榎本石鹸」~明治初期の記録を読み解き、当時の製造法で復刻 沼田ゆかりさん
もう一人の共同研究者、准教授の宮田賢人先生には、倫理学の専門家として、本学のような地域密着型大学における文理融合研究の成果を発信するため、開学の理念(教育倫理・商業倫理)の延長線上に本プロジェクトを意義づけるという役割を担ってもらいました。
今回、化学の知見と歴史学の手法を本格的に組み合わせた文理融合研究によって、榎本の化学者的性格を内在的に明らかにできました。さらに、倫理学の立場から、小樽商科大学でプロジェクトを実施する意義づけを行うことで、文理融合研究の成果を市民に広く知ってもらうことにつながりました。化学・歴史学・倫理学という、近くはない分野の協業だから成し得たことであり、ここに協業の意義があると考えています。
3年がかりで製品化、12・13日にテスト販売
―「榎本石鹸」の復刻はどのように進めましたか。
1年目は、古文書の解読と石鹸復刻の実験に挑みました。醍醐先生と歴史学ゼミの学生たちが、「石鹸製造法」のくずし字を判読し、現代の文字に置き換える「翻刻」を行いました。4種類の製造法のうち「マルセリヤンセセープ製法」「冷製石鹸ノ製法」を試すことに。現代の「釜だき製法」「コールドプロセス製法」にあたるので、復刻できる可能性が高いと考えたのです。
そこで、私が石鹸復刻の実験を設計し、化学ゼミ・歴史学ゼミの学生たちの協力のもと、石鹸を作りました。印象深いのは、文系メンバーの「史実に沿った製造法」へのこだわり。「冷製石鹸ノ製法」を試したとき、歴史学ゼミの学生と醍醐先生、宮田先生が、電動の攪拌装置を一切使わず、手動で30分ほど攪拌してくれました。化学ゼミの学生は、普段の実験で手動の大変さがわかっているので敬遠していましたね。
2年目は、完成した「榎本石鹸」を地域活性化に生かしたい、と商品化を目指すことに。化粧品OEM企業に「冷製石鹸ノ製法」による石鹸を製造してもらい、市内の企業の協力を得て、パッケージを制作しました。 3年目の今年は、製造した石鹸の改良に取り組みました。製造上の課題だった変色は、原因と考えられる天然の添加物を入れないことで解決。小樽市内で12・13日にテスト販売します。