今は自分が“何者”かわからないままでいい――「廻廻奇譚」大ヒットのEveの『呪術廻戦』への寄り添い方
その「廻廻奇譚」の大ヒットは、Eveの創作姿勢、そして生き方にも影響を与えたという。 「昔だったら普遍的なものを作ろうとしていたと思うんですけど、そういう気持ちは、正直に言うと年々薄れてしまって。それはいいことなのか悪いことなのかは、まだわからないんですけど。大袈裟な言い方かもしれないですけど、音楽という枠組みだけでなく、自分の人生が豊かに、心が豊かになるには、どう自分と向き合って、どう生きていけばいいのかに、すごく重きを置くようになりました」 Eveに、自身は「アーティスト」と「職人」のどちらの要素が強いかを聞いてみると、その姿勢のしなやかさが際立つ。 「どっちも違うような感じはしますね。僕はEveですけど、どこかEveを俯瞰して見ているような感覚もあります。そこは自分としてもまだよくわかっていないのが正直なところなんですけど、今は自分が“何者”かわからないままでいいです。そのときの気分で今後も自分に正直にやっていけたらいいなっていうのは変わらないので。自分がやってこなかったこととか、見てみたい世界や景色だったり、そういうものが見つかったら、『次はこういうことをやりたい』っていうのがおのずと見えてくると思います」
MVでは音楽とアニメが同じ熱量でぶつかっている
今年4月にはノンタイアップのシングル曲としては久々となる「夜は仄か」をリリースした。キャッチーなベースラインから始まり、サビでは解放感あふれるメロディーに乗せて《夜空を見上げたなら 今踊って》と歌うダンスナンバーのこの曲。歌詞に描かれる孤独な情景や未来への不安を抱えた心情も胸をつかむ。 「コロナ禍の状況が続いて、ライブもできなくなってしまったし、今までの活動のあり方がすごく変わってしまった。活動だけじゃなく、きっとみんなにも当てはまることだと思うんですけど、生活のあり方も大きく変わってしまった。人と直接会って話したり、ご飯を食べたり、そういう機会が減ってしまって、改めて人とのつながりの大切さに気づいた。そういうこともこの曲に反映されていると思います。まだまだ先の見えない、すっきりとしない毎日が続いていると思うんですけど、そういう現実としっかり向き合ったうえで、その中で自分だったらどう前向きなメッセージを伝えていけるだろうかを探っていきました」