今は自分が“何者”かわからないままでいい――「廻廻奇譚」大ヒットのEveの『呪術廻戦』への寄り添い方
タイアップでは自分と共通する部分を考える
2019年2月にはアルバム『おとぎ』でメジャーデビューを果たし、その後はテレビアニメ『どろろ』のエンディングテーマ「闇夜」や、「JR SKISKI 2019-2020キャンペーン」のテーマソング「白銀」、ロッテ「ピンクバレンタイン」プロジェクトのテーマソング「心予報」など、アニメやCMを中心に様々なタイアップソングを手掛けてきた。 「タイアップのときには自分の対面に作品があるので、手を動かす前にまずその作品と自分との共通項みたいなものを探っていくということを毎回やっています。もちろん先方からのオーダーや希望もあるんですけど、その中で自分と共通する部分は何だろうということを考える。その寄り添い方は大事にしないといけないと思っています。タイアップ曲を作る中で、自分の新たな一面に気づける瞬間がたくさんある。一人で好き勝手に作る曲もいいんですけれど、タイアップにもそれとは違ったよさがあって、どちらもすごく好きですね」 そんなタイアップ曲の中でも、漫画連載時から愛読してきた『呪術廻戦』のために書き下ろした「廻廻奇譚」は、Eveのキャリアにとっても、大きな意味を持つ楽曲になった。持ち前の歌唱力を駆使し、アッパーな曲調に畳みかけるような言葉とドラマティックなメロディーでリスナーを魅了する「廻廻奇譚」は、これまで以上に広くEveの名前を届けるきっかけになった。 「『廻廻奇譚』は作品に寄り添いすぎたぐらいなんですけど、そういう寄り添い方はすごく大事にしないといけないなって考えたんです。作品の熱量がものすごく高いし、自分もすごく好きな作品だったので、作っている時には強度のあるもの、タフなものを作りたいという思いで、自分のスキルを詰め込んでいきました。曲を出してからは、僕がどうこうというよりも、作品と一緒に聴いてくださる人のそれぞれの思いのおかげで広がっていったと思います。たくさんの人に聴いてもらえたこと、作品を愛する人に受け入れてもらえたことは、作品を好きだった自分にとってもすごく嬉しいことですね」