【1973年製バットモービル】カルトモデルへのオマージュ!少年たちの憧れだったBMW 3.0 CSLでミュンヘンを駆け抜ける
カルトビークルでタイムトラベル
いずれにせよ、これは時代背景の中で見なければならないことだが、どのような状況でもパワーを発揮する。「CSL」には、小さな指令にも反応するZFゲンマースパイラルローラーステアリングシステム、ビルシュタイン製ガス圧ショックアブソーバーを備えたシャシー、プログレッシブで硬めのコイルスプリング、25パーセントのロック値を持つディファレンシャルが装備されている。これらすべてが安定した、決して神経質になることのない日常のレーシングカーにしている。 バックミラーを見ると、後ろの世界がぼんやりと沈んでいくのがわかる。シャープさを保っているのは、このとてつもなく大きなウィングだけである。彼らは、リアアクスルに常に圧力がかかるように、そしてBMWが安定感を保つように、非常に大きな形状をしている。 安定を保つ。冷静さを失わないように。しかし、これは難しいことだ。このクルマの中では、純粋な非合理性の中で呼吸しているのだから。あらゆる隙間から、センスも理性もなく目立ちたがり、誇示しようとする傾向が感じられる。その一方で、バケットシートがあるだけで冷静さを保つことができる。たしかに乗り降りはしにくい。しかし、ひとたび座ってしまえば、引き締まった頬が軌道を維持し、粗めのコーデュロイ生地と長い腿のサポートが家庭的な雰囲気さえ漂わせる。いずれにせよ、これほど優れた着座姿勢、これほど優れた全方位の視界、これほどシンプルで直感的な操作性を備えたクルマは、今日でもそう多くはないだろう。
ああ、もしあの時、父さんが家のためにお金を貯めずに、「バットモービル」にお金をつぎ込んでいたら・・・と、価格表を見ながら思う。1974年ベース: 38,860マルク(約333万円)、メタリック塗装595.50マルク(約6万円)、ブラウプンクトフランクフルト432.34マルク(約4万円)、セカンドエクステリアミラー22.52マルク(約2千円)。「CSL」がガレージに置かれることなく、マッチボックスの駐車場に置かれるだけだったのは、ちょうどよかったのかもしれない。そんなものがあったら、ある時点で魅力がなくなってしまう。 そしてまた狂気のスリルに捕らわれ、ただ運転したくなり、夜を感じ、車を感じる。バットマンとしての人生は、いつもラララ、ヘイヘイヘイというわけではない。だが、今日は違う。
Andreas May