このままでは「日本は失われた40年」へ突入する
21世紀になっても、アップルから「iPodなどを一緒にやってくれないか」などと頼まれたのに、あえて断って、自分たちが1980年代にやっていたことを21世紀にもやろうとして、結局、行く場所は未来どころか、現在にもなく、過去に戻り続け、自滅した。 ■アメリカのテックバブルとは、どこが違ったのか ソニーをやり玉に挙げたが、日本経済全体がそうだった。「ジャパンアズナンバーワン」と持ち上げられ、自分たちでインフレさせた株価と円高で、株式の時価総額世界ランキングは日本企業が独占し、東京の山手線の内側の土地価格で、アメリカ全土が買えるという試算を出して、喜んでいた。そして、ロックフェラーセンターを馬鹿高い価格で買って喜び、そのあとは何もしなかったのである。
ここがアメリカの1990年代末から2001年へのテックバブル(ITバブル)と、大きく異なるところである。アメリカのテックバブルはバブル崩壊後、その悪影響で同国経済を停滞させることはなかった。 これは、一義的には、こちらは株価バブルに限定され、銀行システムが巻き込まれなかったため、経済全体に悪影響が波及しなかったからだと理解されている。そこが、日本の1980年代の不動産バブル、アメリカのサブプライムバブルと異なるところだと教訓として残されている。
それはそのとおりなのだが、アメリカのテックバブルについて重要なことはもうひとつある。それは、バブルの悪影響と同時に、バブルによるプラスの波及効果もあった、ということだ。 ■アメリカのメインエンジンを替えたドットコムバブル すなわち、異常な株価バブルになったことで、多くのリソースがITセクターに殺到した。ドットコムバブルと言われるように、ただ社名にドットコムという言葉を付け加えた社名に変更したようなインチキな会社も多くあったが、一方で、アマゾン・ドット・コムもマイクロソフトも、その他多くの企業が、異常な株価による株式報酬にひきつけられて、アメリカ中の優秀な人材がITセクターに殺到したのである。マネーも人も殺到し、ビジネスモデル的なブレイクスルーの実現に成功したのである。