このままでは「日本は失われた40年」へ突入する
中国・インドの台頭の一方、韓国やタイをはじめとするアジア金融危機によりリセットされ、抜本的な改革をせざるをえなかった東アジア・東南アジアの成長を利用して、これらの経済と有機的・構造的な連携・発展を目指すべきだったのに、それをしなかった。 その代わりに、これらの地域の中所得層の拡大を、日本国内で減少する需要の穴埋めとみて飛びついた。生産基地としての中国や東南アジアは相互分業ではなく、ライバルとして認識し、1980年代には勝てていたのだから、それを取り戻すために、高くなったコストを削減し、相手の経済水準に降りていくような戦略をとったのである。だから、円安という国富の減少を喜んだ。それが、現在の日本の所得水準の低下、ひいては1人当たりGDPでついに韓国に抜かれる(2023年)という事態を自ら招いたのである。
■アベノミクスは国富を大幅に目減りさせる安売り戦略 そして、世界の需要はリーマンショック後急減する。世界金融バブルが崩壊したのである。時間差で、中国経済バブルも崩壊した。この危機を、日本は再び、過去に帰ることで逃げ切ろうとした。アベノミクスである。 小泉・第一次安倍政権で、規制緩和という見せかけだけの改革と、輸出立国という過去への逆戻りでしのごうとしたわけだから、それを第二次安倍政権が継承したのは自然ではあった。
アベノミクスとは、1980年代の日本のような輸出立国、内需不足をダンピング輸出でしのぐというモデルを再び採用したものだ。小泉政権では、リストラ、コストカットであったが、アベノミクスでは円安という日本の国富を大幅に目減りさせることによる安売り戦略であった。 モノを輸出し、国内のソフトを観光という形で叩き売ることにより、何とか減少する国内需要を補うということにすぎなかったのである。新しいことと言えば、株価インフレ政策であるが、それこそ、1980年代のバブル再来を願う、資産インフレ戦略であった。