「光る君へ」実物が残っていない紫式部の文字はこうして生まれた!書道指導・根本知が明かす
吉高由里子が紫式部(まひろ)役で主演を務める大河ドラマ「光る君へ」(NHK総合・日曜午後8時~ほか)で題字揮毫(きごう)および書道指導を務める根本知。紫式部はのちに1000年の時を超えるベストセラーとなる「源氏物語」の作者として知られるが、実物の書は残されていない。ドラマでは一体、どのようにして紫式部の文字を作り上げていったのか。根本が裏側を明かした。 【画像】紫式部(吉高由里子)の書道シーン 本作は、平安中期の貴族社会を舞台に「源氏物語」を生み出した紫式部(まひろ/吉高)の生涯を、大河ドラマ「功名が辻」(2006)や、社会現象を巻き起こした恋愛ドラマ「セカンドバージン」(2010)などの大石静のオリジナル脚本で描くストーリー。本作では紫式部のほか清少納言(ファーストサマーウイカ)、藤原道長(柄本佑)、藤原行成(渡辺大知)らの独特な書も注目を浴びているが、各キャストに書の指導を行っているのが根本。題字と書道指導を兼任する異例の抜擢となった。
後半戦の見どころの一つが「源氏物語」誕生秘話だが、そもそも劇中に登場する紫式部の文字はどのようにして生まれたのか? そのもとになったのが「伝紫式部」と言われる書物だ。
「監督陣や脚本の大石先生と相談の上、こういう字はどうですかと何回か提案させていただきました。紫式部の実物の文字は残っていないので、まず参考にしたのが『「伝紫式部』と言われる古筆切(古い書物の断片)の伝称筆者による文字です。『古筆』とは書道史上で、主に平安時代から鎌倉時代初期までに書かれた歌や物語に残る優れた筆跡を指します。古い書物はバラバラになって各地に分散しているので、もともと誰が書いたのかわからない。なので後世の例えば鎌倉、室町時代にそれらを手に入れた人は専門家に相談するわけです。紙の質とか書かれている内容、そして書風を見て伝聞もふまえて、どの時代に書かれたものなのか、執筆者を判断する。そのうえで『伝誰々』と鑑定するんですが、紫式部も成田山の書道博物館に『久海切』という『伝紫式部』があって、それを見るとすごく細くて、回転が多くて小粒という特徴がある」