【光る君へ】正妻の姪に手を出して愛人関係に…… 中宮彰子の女房のなかにいた道長のお相手とは?
NHK大河ドラマ『光る君へ』の第32回「誰がために書く」では、まひろ(紫式部/演:吉高由里子)が中宮彰子(演:見上愛)のもとに出仕し始める様子が描かれた。新参者のまひろを冷ややかに見つめるのは、中宮彰子のために集められた女房たちだ。そんな彼女たちのなかには『栄花物語』で道長と愛情を交わしたとされる女性がいた。果たしてどんな女性だったのだろうか。 ■妻にはならない高貴な男性の愛人たち 平安時代には、女房として仕える主人もしくはその近親者と愛情を交わす女性もいた。そういう女性のことを「召人(めしうど)」という。この召人は妻とはなり得ず、あくまで主人への奉仕という関係に留まる。そしてこうした現代でいう“愛人”的な存在だった召人は、『源氏物語』をはじめ多くの文学作品に登場している。 中宮彰子に仕えていた女房たちのなかにも、高貴な男性の召人となった女性がいた。その名を「大納言の君」といい、本名は源簾子と伝わっている。彼女の父親は諸説あるが、源倫子の兄・源時通というのが通説だ。倫子といえば藤原道長の正妻である。つまり、大納言の君は倫子の姪であり、彰子とは従姉妹という関係の高貴な姫君であることがわかる。 ちなみに同じく彰子に出仕していた妹の小少将の君は紫式部の親友だった。大納言の君もまた紫式部と親交を深めていたらしく、『紫式部日記』にもたびたび登場している。紫式部は大納言の君のことを「大納言の君は、いとささやかに、小さしといふべきかたなる人の、白ううつくしげにつぶつぶと肥えたるが、うはべはいとそびやかに、髪、丈に三寸ばかりあまりたる裾つき、髪ざしなどぞ、すべて似るものなく、こまかにうつくしき。顔もいとらうらうじく、もてなしなど、らうたげになよびかなり」と書き残している。簡単にまとめれば「品のある美しい人で、物腰も可愛らしく柔らかな人である」とその容姿とおしとやかな様子を褒め称えている。 さて、この大納言の君のお相手というのが、道長なのである。『栄花物語』の巻八「はつはな」には、彼女が元々源則理の妻であったこと、離婚後に彰子のもとに出仕し、その美貌に魅了された道長の愛を受け入れて召人になったことが記されている。道長にとっては正妻の姪であり、娘の女房だった女性と男女の仲になったことになる。 平安時代にはざらにあったこととはいえ、なかなか衝撃的な2人の愛は、ある時正妻・倫子にバレてしまった。この時のことも『栄花物語』が描いている。「(道長は)御こころざしありて思されければ、まことしう思しのたまはせたまひけるを、殿の上(倫子)は『こと人ならねば』と思しゆるしてなむ」というのだ。 倫子は大納言の君が自身の姪という近しい存在だったからこそ、道長との関係を許したのだという。どこの馬の骨とも知れない女性とふらふら遊ぶよりは、身元のしっかりした身内と割り切った関係でいてくれるほうがよいと思ったのかもしれない。
歴史人編集部