【ナゼ】元大阪地検検事正“性的暴行”裁判で再び垣間見えた検察組織の『闇』…被害女性検事の涙の訴え「なぜもっと早く…」同僚による“情報漏洩”“侮辱”刑事告訴も
卑劣な事件の背景には、“またもや”大阪の検察組織としての問題がはらんでいるかもしれない―。そう感じざるを得ない裁判の幕開けとなった。大阪地検のトップである検事正を務めていた男が、部下の女性検事に性的暴行を加えた罪に問われる裁判。事件から6年の月日がたち、男は起訴内容を認め謝罪した。会見で女性検事が涙ながらに語ったのは、「被害を受けてから約6年間、本当にずっと苦しんできた。なぜもっと早く罪を認めてくれなかったのか…」という悲痛な叫びだった。 ▼【画像】会見する被害女性、大阪地検検事正に着任当時の北川被告(2018年)、初公判に臨んだ北川被告のイラスト、事件現場の官舎など
■“関西検察のエース”手錠をされ被告として法廷に…否認から一転、起訴内容を認め謝罪
10月25日、大阪地裁の大法廷に手錠をつけられた状態で入ってきたスーツ姿の男。かつて法曹界では“関西検察のエース”と呼ばれ、大阪地検のトップである検事正にまで昇りつめた、弁護士の北川健太郎被告(65)だ。検事正に着任した頃の映像に比べ、頬が痩せているように見えた。 そして、北川被告の対面側に座る検察官の傍らに設置されたパーティション。周りからは姿が見えないよう仕切られたその裏には、かつての部下である検事の女性が被害者参加制度を利用して出席した。
傍聴席は満員で、抽選も行われた注目の裁判は、約10分遅れで始まった。北川被告の人定質問が行われる。傍聴席に届くか届かないかぐらいの、小さな声だった。 「北川健太郎です。弁護士です」 起訴状などによると、北川被告は検事正在任中だった2018年9月、大阪市内にある官舎で、酒に酔って抵抗が難しい状態だった女性に対し、性的暴行を加えた準強制性交の罪に問われている。 関係者によると、北川被告は逮捕直後、「同意があると思った」と犯行を否認していた。ところが、裁判が始まると方針を一転させた。 北川被告 「公訴事実を認め、争うことはしません。被害者に深刻な被害を与え、深く反省し謝罪したい。検察組織や関係する人たちにも多大な迷惑をかけ、世間を騒がせたことを誠に申し訳ないと思っています」
■突然の逮捕…いつ、どこで事件が起きたかも明かさなかった検察
事件が明るみになったのは、今年6月。「被疑者北川に係る準強制性交等事件」という、突然の知らせだった。 発表したのは大阪高検。大阪地検の上級庁に当たる組織であり、その発表の在り方も物議を呼んだ。 明らかにされたのは「北川健太郎容疑者(当時)を準強制性交の疑いで逮捕した」ということのみ。いつ、どこで、どのように、被害者の性別、そして北川容疑者が容疑を認めているのかどうか、全て「被害者のプライバシーの観点」を理由に、高検は回答を差し控えるとした。 性犯罪の場合、被害者の特定につながる情報を明らかにしないことは多いが、それと比べても異様なまでに検察が何も話したがらなかったのが、かえって各報道機関に違和感を抱かせ、当時もその高検の姿勢を批判する記事が多く見られた。 逮捕から1か月後の今年7月、大阪高検が北川被告を起訴し、徐々に事件の輪郭が明らかになっていく。事件が起きたのは検事正在任中の2018年9月で、北川被告が暮らしていた大阪市内の官舎が犯行現場だと発表された。 しかし、なぜ被害者の女性は事件から6年がたった今年に入って被害を申し出たのかは謎に包まれたままだった。