【ナゼ】元大阪地検検事正“性的暴行”裁判で再び垣間見えた検察組織の『闇』…被害女性検事の涙の訴え「なぜもっと早く…」同僚による“情報漏洩”“侮辱”刑事告訴も
■“将来の検事総長候補”突然の退官…その裏で「死にたい。辞職を申し出ます」
北川被告は石川県出身。金沢大学を卒業後、1985年、東京地検の検事として任官し、検察キャリアが始まった。翌年から主に関西地区の検察庁を中心にキャリアを重ね、那覇地検の検事正、大阪高検のナンバー2である次席検事、最高検の刑事部長などを歴任。 2018年2月、大阪地検の検事正に着任。在任期間中には、森友学園への国有地売却をめぐる財務省の公文書改ざん問題を担当した。 北川被告を知る関係者によると、事件捜査では筋読みを緻密に行いながら慎重に進め、決して無理をしないタイプだったという。リスクヘッジにも長けていて、検察上層部からも一目置かれる存在。大阪高検トップの検事長候補、ひいては関西から久しく出ていなかった全国の検察組織のトップ・最高検検事総長になる候補の一人とまでささやかれていた。 ところが、大阪地検検事正の在任中だった2019年11月、定年まで残り3年を残して退官した。期待されていただけに周囲では「退官は早すぎる」と驚きの声も上がっていたという。 後の裁判で明らかになるが、退官する5か月ほど前、北川被告は被害者の女性検事に対し、「死にたい。辞職を申し出ます」と伝えていた。 しかし、退官時に事件のことは一切明らかにしないまま、「一身上の都合」とされていた。退職金を受け取り、何食わぬ顔でOBとして親しくしていた現役検察官らと飲み歩く北川被告の姿に、女性検事は「怒りや悔しさ」とともに「自己嫌悪」に苛まれたと明かしている。
■裁判で明かされた卑劣な犯行「これでお前も俺の女」 “口封じ”も「表沙汰にすると検察組織が立ち行かなくなる」
25日に行われた初公判で、検察官が冒頭陳述を読み上げ始めると、卑劣な犯行の経緯が次々と明らかになっていった。 女性検事は知人らとの懇親会の後、二次会を断って一人で帰ろうとタクシーに乗り込んだところ、北川被告に座席の奥に押し込まれ、2人で官舎へと向かった。酒に酔って泥酔状態になっていた女性。記憶が戻ってきたときには、北川被告が性的暴行に及んでいたという。 女性検事には夫も子どもいる。「夫が心配するので帰りたい」と懇願しても、北川被告は「これでお前も俺の女だ」と言い放ち、性行為を続けた。 被害を夫や検察庁の同僚に知られて、家庭や検事の職を失いたくないと考え「すべての事を忘れたい」と考えた女性検事は事件後にその旨を北川被告に伝えると、「警察に突き出して下さい」と謝罪めいた言葉とともに、「時効が来るまで食事をご馳走する」と言い放ったという。 その後、北川被告から「死にたい。辞職を申し出ます」などと記されたメールが届くようになり、直接会おうと言ってくるのに対して、女性は書面での回答を求めた。北川被告から届いた書面に、目を疑う。 「本件を表沙汰にすると、マスコミに検察庁がたたかれて組織が立ち行かなくなる」 これを見た女性検事は「検察庁に迷惑がかかると思い申告できなかった」のだという。北川被告は“口封じ”をしていたのだ。 この書面が届いた翌月に、北川被告は退官している。 女性検事はフラッシュバックに苦しみながら過ごし、今年2月にはPTSD=心的外傷後ストレス障害と診断され、就労困難だと判断された。 裁判中、北川被告は時折長く目を閉じながら、検察官らの声に耳を傾けていた。