20分間だけ垣間見えたチームの方向性(Bリーグ・サンロッカーズ渋谷 vs ファイティングイーグルス名古屋)
ハーフタイム中に檄が飛んで後半に目覚めたFE名古屋
3連勝中のサンロッカーズ渋谷と、今シーズン初の2連勝を飾ったファイティングイーグルス名古屋の中地区同士の水曜ゲーム。アウェーに乗り込んできたFE名古屋が、SR渋谷のアンソニー・クレモンズをどう抑えるか。先発の内尾聡理が対峙し、いきなり3ポイントシュートを許すも、自ら得点を決めて対抗する。しかし、4分12秒に早くも2つのファウルを犯し、ベンチに下がる。交代で入った保岡龍斗もクレモンズを止められず、すぐさまファウルを告げられた。ファウルが続く状況に対し、FE名古屋の川辺泰三ヘッドコーチは、「基本的なピックに対するディフェンスを遂行することが全然できていなかった。最初の2回はうまくできていたが、3回目から混乱し、その後は崩壊してしまってファウルが混んでしまった」とマッチアップする選手たちの問題ではなく、チーム全体のミスだったことを強調する。クレモンズに対し、「保岡と内尾がファウルを使いながらもまずは止めること。さらにアーロン(ヘンリー)をマッチアップさせたのもプラン通りだった」と川辺ヘッドコーチは準備して臨んでいた。 サイズも体格も異なる相手とマッチアップが続いたクレモンズは、「もう感覚的であり、説明するのは難しいが…」と前置きしつつ、「とにかく責任を持って正しいプレーをし続けること。チームメイトもコーチも信じてボールを預けてくれるからこそ、ミスマッチをどうアタックするかを考え、それによってビッグプレーも決めやすくなる。信じてくれるみんなに感謝しかない」。18点、7アシストといずれもシーズン平均を超え、1本もターンオーバーせず、完璧な試合運びで80-66。SR渋谷の4連勝に大きく貢献した。 前半で22点差と大きく広げられたFE名古屋はハーフタイム中、「CS(チャンピオンシップ)進出を目標にしているのに、CSに行く力があるチームに対してチャレンジャー精神を欠き、僕たちの方がエナジーも低く、ピックやポストのディフェンスの遂行力が低い。この状況では絶対に勝てない」と指揮官の檄が飛んだ。 前半はコート内とベンチで半々の時間を過ごした中村浩陸は、いずれの立場から冷静に観察し、「ディフェンスの強度が全然低いと思っていました。まずはそこを改善するためにもアグレッシブに、相手のポイントガードにプレッシャーをかけていこうと思って後半はコートに立ちました」という言葉どおり、中村はディフェンスで流れを呼び込む。第3クォーターを終え、48-59と点差を半減させた。 後半20分間の得点だけを抜き出せば、39-31でFE名古屋が上回っている。「だからこそ余計に悔しい」と川辺ヘッドコーチは、勝利の答えを導き出していた。昨シーズンから8人の選手が入れ替わり、チームビルディング段階のFE名古屋にとっては成功体験が必要である。結果は伴わなかったが、分解して見れば成長は見られた局面があり、それを40分間つなぎ合わすだけだが、それが難しい。「遂行力やエナジーの問題があるが、それ以前にメンタルの準備が欠如していた。大事な試合が続く中で、そういう人間性の部分もしっかり成長していかないといけない」と川辺ヘッドコーチ自身も反省し、チーム力を全員で引き上げている。