アウトドアグッズで災害時の臨時ライフラインを確保 ― 用意しておくと安心な基本用品を専門家が解説
それを補完するために「ネイチャーストーブ」も持っておくとよいでしょう。ネイチャーストーブは、公園に落ちている葉っぱや小枝などを燃料にして火を起こせるストーブです。雑誌や新聞紙などの紙類も燃料に使えます。天気がいい日は乾いた葉っぱや小枝をかき集めてネイチャーストーブを使って、天気が悪い日はガスボンベのバーナーを使って併用すれば、ガスボンベのストックを保つことができるのです。 ただし、どちらも日頃から使い慣れておくことが重要。日常的に使い方をマスターしておけば、いざというときに火に対する不安がなくなります。 ――避難所で火を扱うときの注意点を教えてください。 寒川さん: 火を使うものは屋内では使えません。狭いスペースの中で火を起こして、それが何か事故に繋がったら人の命にも関わってきます。避難所のような人が集合しているような場所では、管理者にちゃんと確認を取ってから屋外で使うようにしましょう。
――ライフラインが断たれた中で、電気はどのように確保すればよいでしょうか。 寒川さん: 電池の消費を防ぐために、太陽光でチャージできるソーラーパネルも用意しておくとよいでしょう。バッテリーに直接給電できるコンパクトなサイズのものも多く、値段も手頃です。天気が悪くて太陽光でチャージするのに時間がかかるときは手回しでチャージすることもできるものもあります。USBでつなげば、スマホの充電も可能です。 スマホは今の時代必需品。情報を得るためにも、家族などとの連絡手段としても大事です。スマホの電力をいかに維持していくかも考えなければなりません。そのためにもこういうツールをしっかりと使いこなしてほしいですね。
災害時、アウトドアを楽しむ人は誰かのライフラインになってほしい
――これからアウトドアを始めたい、グッズを揃えたいという人も多いと思いますが、まず何から始めればよいのでしょうか。 寒川さん: アウトドアはものを揃えて終わりではなく、揃えたものをどう使いこなすかのほうが大事です。 そのためにはぜひキャンプをやってほしい。キャンプで火を起こしたり、水を調達したりして、楽しくグッズの使い方を身につけて、経験を積んでほしい。それを繰り返すうちに自分に合ったグッズを選べるようになるし、万が一災害が起きたときもグッズを生かすことができるでしょう。 ――最後に、アウトドアを楽しんでいる方に向けて、アウトドアの知識や経験を防災に生かすための心構えを教えていただきたいです。 寒川さん: アウトドアと防災を結びつける活動をして10年近くになりますが、この数年さまざまな災害が続き、コロナ禍もあって、アウトドアやキャンプを始める人がすごく増えました。ある調査によると、日本の人口の10人に1人くらいは何かしらアウトドアに触れていると言われているそうです。 今アウトドアをやっている人、ないしはこれから始める人は、まずは自分で体温を守る、水を得る、火を安全に使えることを身につけてほしい。これが自分たちでできるようになったなら、ぜひ人にも提供してもらいたいです。 数年前に北海道で大きな地震があった際、アウトドア仲間が通りがかりの人に向けて電力や水を提供していました。自分のストックを減らして提供しているのではなく、アウトドアグッズを活用して自分で供給できているから、余っている分を他の人に提供していたのです。 こういったマインドでアウトドアの経験を生かせば、一人で自助も共助もできるということになります。その人たちがたくさん集まったら、それはまさしく公助のような力になる。つまり、その人自身がライフラインになることができるということ。アウトドアを既にやっている人、これから始める人たちがそういう気持ちで実行に移せば、ほとんど日本全体の人たちをカバーできるんじゃないでしょうか。 ----- 寒川一(さんがわ はじめ) 香川県生まれ。災害時に役立つアウトドアの知識を書籍、キャンプ体験、防災訓練などを通じて伝えるアウトドアライフアドバイザー。焚き火カフェなど独自のアウトドアサービスを展開。2021年3月に自身が監修した『キャンプ×防災のプロが教える新時代の防災術』(学研プラス)を、9月に著書『焚き火の作法』(学研プラス)を出版予定。 文:大井あゆみ 制作協力:Viibar