“犯罪者”の「親」は社会から責められ、自発的に“喪に服する”… 「加害者家族白書2023」が刊行
5月10日、特定非営利活動法人「World Open Heart」理事長の阿部恭子氏が記者発表を行い、同団体が発行した「加害者家族白書2023 再犯防止と加害者家族支援」について説明した。 【グラフ】加害者家族から相談が寄せられる「事件の内容」
加害者家族から寄せられた3000件以上の相談を分析
「World Open Heart」(以下WOH)は2008年に仙台市で設立。「犯罪や不法行為の行為者ではないにもかかわらず、行為者と親族又は親密な関係にあった事実から差別や非難を受けている人々」を「加害者家族」と定義して、支援活動を行ってきた。 今回発行された「加害者家族白書2023」には、2023年3月までに同団体に寄せられた3071件の相談に基づく分析が掲載されている。
「殺人事件」の加害者家族からの相談が最多
「事件の内容」の指標によると、WOHに最も多く寄せられているのは「殺人事件」の加害者家族からの相談。また、強制性交や詐欺、強制わいせつ事件などに関する相談も多い。 日本の犯罪全体において殺人事件の占める割合は僅かであることをふまえると、被害者が死亡するような重大事件ほど報道で多く取り上げられ、それに伴い加害者家族が被る心理的・社会的なダメージも大きくなることがうかがえる。 また、阿部氏によると、「振り込め詐欺」の受け子・出し子の加害者家族からの相談も多い。一時は殺人事件よりも詐欺事件に関する相談件数が上回っていたという。
犯罪者の「親」の責任が厳しく追及される国
WOHへの相談者の男女比は男性が1489人に対して女性が1441人と、男性が若干上回っている。設立当初は女性からの相談が主だったが、団体の知名度が向上するとともに男性からの相談が増えていった。 「加害者との関係」の指標を見ると、「父親」からの相談が最も多い。日本は父親が子の犯罪の社会的責任を追及される社会であり、重大な事件ほど父親の社会的地位にも影響が生じる。また、地位が高いほど追及が厳しくなり、父親の受ける心理的・社会的ダメージも深刻になる。 阿部氏によると、諸外国では「犯罪者の子」の支援が重視されている一方で、親への支援が必要となることは少ない。子が犯罪を行ったために仕事を辞めることや、子の犯罪に責任を感じて自殺にまで至ることは、「犯罪者の親」の責任を過剰に追及する日本に特徴的な問題だという。 「相談者の年齢」は60代が最多であり、50代と70代も多い。近年では高齢の犯罪者が増えており、WOHでも高齢犯罪者の家族からの相談が増加傾向にある。また、「就職氷河期世代」(40歳~50歳半ば)の親からの相談がとくに多い。 近年では加害者の親世代も経済的な余裕がないことが多いため、被害者への賠償などは加害者の祖父母が対応することも増えているようだ。