杉咲花の芝居がリアルすぎる…”朝子”と宮本信子”いづみ”が重なった瞬間とは? 『海に眠るダイヤモンド』第6話考察レビュー
賢将(清水尋也)&百合子(土屋太鳳)の門出
リナと進平の子が生まれた8月10日は、賢将(清水尋也)と百合子(土屋太鳳)の結婚式の日でもあった。賢将はずっと朝子(杉咲花)のことが好きだった。 島から出られない朝子のためにガラス細工のお土産を買ってきたり、手を握ることすら躊躇うほどに。だけど、その朝子に誤解されてしまう可能性も差し置いて、百合子の恋人ごっこに付き合ってあげた。それくらい百合子のことも大事に思っていたのも本当なのだ。 おそらく被曝したことから結婚も子供も諦めていた百合子。あの日、長崎に行くきっかけを作った朝子を恨みはしたが、真実は打ち明けず、賢将が島で孤立していたときも周りの目を気にすることなく側にいた。 そういう百合子の悪意に取り込まれない気高さや根っこにある思いやりに賢将はいつしか惹かれていたのではないだろうか。朝子にガラス細工を買ってこなくなったのは、彼女を意識し始めた鉄平に遠慮していたのもあるかもしれないが、賢将の中で百合子の存在が大きくなり始めていたからだろう。 賢将は「これからも付き合ってよ、俺の人生に。俺も百合子の人生に付き合うから」と百合子にプロポーズする。「私の人生、手強いわよ」と素直じゃない言葉とは裏腹に、涙が溢れて止まらない百合子を愛おしい目で見つめながら、「俺はタフだよ、百合子がいれば」と返す賢将。 その光景は多幸感に溢れていた。2人の結婚を、以前の辰雄(沢村一樹)なら反対していたかもしれない。妻が出ていく原因を作った端島を、この島の人間を好きになれずにいた辰雄。だけど、壁を易々と超えてくる一平(國村隼)と腹を割って話したことで、ようやく賢将はこの島に育ててもらったと思えるようになった。
朝子(杉咲花)といづみ(宮本信子)が重なった瞬間
8月10日は一平にとっても幸せな時間だったことだろう。戦争で3人の子供を亡くし、「あいつの子どもは戦争で一人も死んでない」と辰雄に対して複雑な気持ちを抱いたこともある。 だけど、必死に働いて生き残った鉄平や進平を育てあげ、辰雄の子である賢将のことも実の息子と変わらないように接してきた一平。その結果、進平の子供が生まれ、賢将が本当に愛する人と一緒になるという幸せな瞬間に立ち会うことができた。 身を引き裂かれるような辛いことが人生には多々ある。だけど、地に足をつけて前に進んでいった先には、生きてて良かったと思えるような瞬間が必ず訪れるというメッセージにも思えて、こちらまで背中を押された気分になった。 そしてこの第6話は、本当の意味でいづみが朝子であるという事実が裏付けされた回でもある。これまでは、食堂の看板娘である朝子と、東京で植物関連の会社を経営するいづみがあまり頭の中で結び付かなかった。 だが、コンクリートに囲まれた端島に屋上庭園を作るという一大プロジェウトを指揮し、物怖じしない姿勢で業者と交渉する朝子が、現代で利益ばかり優先し、植物のことを何も考えていない子供たちと正面からぶつかるいづみの姿に重なった。