高校サッカー選手権で目立っている「分析」の力 監督・スタッフは試合後も休まず映像チェック
【スタッフは寝る間も惜しんで分析に励む】 普段のリーグ戦は、1週間ごとのサイクルで試合を行なうため分析にも余裕があるが、選手権を始めとした全国大会は短期決戦であるため、時間との戦いでもある。 米子北(鳥取県)の場合、プレミアリーグWESTでは選手自身が自チームと次に戦うチームの分析を行ない、気づいた点をミーティングで伝えているが、選手権の場合はそうはいかない。同時刻で行なわれる次の対戦相手の試合をコーチや選手が撮影しながら、気になる点を同時進行で挙げていくのが全国大会での分析方法だ。 試合を終えたばかりの中村真吾監督も、休む間もなく送られてきた映像を会場から宿舎へと帰るバスの中でチェックし、気になる箇所を切り取っていく。 連日の戦いが続くインターハイの場合は、試合の日の夜のミーティングで分析した映像を流せるように間に合わせている。選手権は中1日空くため幾分楽ではあるが、なるべく夜の間に分析を進めて、翌朝のミーティングで選手に映像を見せたうえで、昼の練習で対策を落とし込む。 以前、選手権での優勝経験を持つ監督が「今の時代の指導者は忙しい。俺らの時代は試合に勝てば『祝勝会だ!』と言って飲みに行っていたけど、そうはいかない。目の前の試合が終われば次の試合の分析が待っていて、時間がない」と話していたが、昔と今では指導者の過ごし方は様変わりしている。 昨年度の選手権で準優勝を果たした、近江(滋賀県)の前田高孝監督のコメントを思い出す。 「選手権って中1日なんですけれど、結構忙しくて。助けられたなというのが、ブラックサンダーとコーヒーとレッドブル。この"三種の神器"で僕は乗りきりました」 大げさな話ではなく、監督を含めたスタッフ陣は寝る間も惜しんで分析に励み、試合に挑んでいるのだ。 ただ、実際に試合を行なう際は、すべてが分析どおりにうまくいくとは限らない。米子北は1回戦で前橋育英高校と対戦したが、中村監督が気になっていたのは、相手の右サイドバックに入ったDF瀧口眞大(2年)だったという。選手に映像を見せて警戒してはいたが、「あそこまで高い位置に上がるとは思わなかった」(中村監督)。 前半19分に先制点を許したのは中盤からのサイドチェンジで、瀧口が右サイドの高い位置を取り、ゴール前に入れたボールをFWオノノジュ慶吏(3年)が合わせた形だった。 米子北の強みである中盤でのセカンドボールの奪い合いでも、前橋育英は一歩も引かず、持ち味を発揮させてくれなかった。そうした要点を抑えたうえで、試合のなかで感じた相手のウィークポイントや変化を突くことのできるのが前橋育英だった。 「試合のなかで修正する力が、前橋育英は一流だと思う。百戦錬磨のチームは試合中に修正できる。相手のいいところを消して、自分たちのストロングを出すのがスカウティング。それが駄目だったら、どう変化させるかまで考えておかないといけない」(中村監督)