野球からサッカーへ異例転身。なぜ前ロッテ球団社長の山室氏は清水エスパルス社長への転身を決断したのか?
観客動員増で発揮されるのが、ロッテの観客動員数を増やし、黒字へと転じさせたユニークかつ独特な手法となる。アイデアをひねり出すのが楽しい、とばかりに山室社長が声を弾ませる。 「ロッテではメディアに取りあげられることも少なかったので、あえてちょっと捻ってみるとか、プロ野球界初と銘打ってみるとか、みなさんを振り向かせたようなことをエスパルスでも実現できれば。あっと驚くとか、プッと笑うとか、いろいろな仕掛けをできればと考えています」 Jリーグから公表されている最新版の2018年度決算で、エスパルスは当期純利益でマイナス2億5600万円と3期ぶりに赤字に転じている。金融のプロとして財務諸表にはすでに目を通した山室社長は、心配無用とばかりに「いやいや、ギョッとなんてしないですよ」と言い、こう続けた。 「構造的なところは見直すべきところが多いのかな、と。特にPL(損益計算書)のところのやり方や仕組みなど、構造的なところはいろいろと見直して、変えていく余地があると思っています。今シーズンはすでに決まっちゃっていることが多く、次の2021シーズンから色をガラッと変えていきたい。3年である程度の変化を感じられるようにして、4年目、5年目が回収期かな、と。3年も待っていられないかもしれないけれども、ただ焦ってもいけないので」 ロッテでも黒字に転じたのは5年目だった。経営状況に厳しい目が向けられるJリーグではよりスピード感が求められるなかで、山室社長は昨シーズンは残留争いを強いられたチーム力の強化と経営力の強化を、車の両輪にたとえながらエスパルスを前へ進めていくと力を込めた。 「プレッシャーはありますよ。ある程度期待していただいていると思いますし、必ず結果を出さなければいけない。あまりしがらみにとらわれる必要もないかもしれないけど、地域やクラブがもっている歴史をはじめとしたいろいろなものがあるし、そういうものをまったく無視して進めるのもよくない。そこは周囲の意見も聞いたりしながらやっていきたい」 都内の自宅に夫人と1男3女を残しての、静岡市内での単身赴任生活もすでにスタートさせた。今月25日に還暦を迎える山室社長は、年齢を感じさせないエネルギッシュな表情を浮かべながら、未知の領域でスタートさせたチャレンジを心の底から楽しんでいる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)