野球からサッカーへ異例転身。なぜ前ロッテ球団社長の山室氏は清水エスパルス社長への転身を決断したのか?
もっとも、東京都に隣接している首都圏の千葉県とは異なり、静岡県の人口は約364万人と、その半分ほどで、なおかつ県内西部をジュビロ磐田、東部をエスパルスが二分している。マーケティングそのものが違ってくるのではないか、と問われた山室社長はプロ野球とは事情が違うと説明する。 「確かに千葉県のマーケットはそれなりに大きいものでしたが、実際にはジャイアンツとマリーンズのファンの数がほとんど拮抗していました。いわゆる千葉都民のほとんどが中央を向いていましたが、このエリアにはプロ野球というコンテンツはない。その意味でも静岡エリアにおける、エスパルスのプレゼンスの高さを肌で感じていますし、クラブのものすごい財産だと思っています」 現在は、左伴繁雄前代表取締役社長からの引き継ぎ作業の段階で、経営に関する数字のすべてに目を通している状況ではないことから、会見終了後の囲み取材で何度も「まだまだ偉そうなことは言えない」と強調した。それでも、ポテンシャルを生かし切っていないと感じる部分はある。 たとえば1試合平均が1万5043人だった観客動員数。ホームのIAIスタジアム日本平の収容人員は2万248人だが、さまざまな事情から浦和レッズを迎えた、昨年4月28日の明治安田生命J1リーグ第9節でマークされた、昨シーズン最高の1万8246人が上限に近い数字になっているという。 「となると、平均でそこ(1万8000人)になるまで、あと3000人くらいになりますよね。Jリーグはキャパシティーの8割を満員と規定しているので、まずは平均で1万6000人を、その次は1万8000人が続く状態を全試合で作り出していく。そうなればスタジアムで観たいと思っても観られない、枯渇感というものが出てきて人気がより高まり、ファンやサポーター、そして市民のみなさんの『もっと大きなスタジアムを』という声にもつながってくる。そうしたストーリーでやれれば」