野球からサッカーへ異例転身。なぜ前ロッテ球団社長の山室氏は清水エスパルス社長への転身を決断したのか?
プロ野球の千葉ロッテマリーンズの前球団社長で、Jリーグの清水エスパルスを運営する株式会社エスパルス(本社・静岡市清水区三保)の代表取締役社長に、今月10日付で就任した山室晋也氏(59)が14日、静岡市内のホテルで就任会見に臨んだ。 来たる2020シーズンへ向けた新体制発表記者会見内の第3部で、同じくゼネラルマネージャーに新任した大熊清・セレッソ大阪前チーム統括部長(55)とともにひな壇に座った山室新社長は、野球とサッカーのボールの違いを例にあげながら第一声を発した。 「ボールのサイズは大きくなりますけれども、基本的には同じスポーツエンターテインメントビジネス界ということで、経営の勘どころはそれなりにわかっています」 みずほ銀行で支店長や執行役員を歴任した山室氏は、2013年11月のロッテ球団顧問就任をへて、翌年1月から球団社長としてチーム改革に着手。球団創設50年目の2018シーズンに初の黒字化を、昨シーズンには球団新記録となる166万5891人の観客動員数をそれぞれ達成した。 しかし、昨年12月1日付で退任して取締役となり、さらに同27日にエスパルスの新社長に就任することが発表された。三重県で生まれ育ち、桑名高から立教大学をへて第一勧業銀行(現みずほ銀行)に入行した山室氏は、高校、大学、社会人とラグビー部に所属。186センチの長身を生かしてロックでプレーしていたが、野球はもちろんのこと、サッカーとの接点もほとんどなかった。
銀行マン時代を含めて静岡県ともいっさい無縁で、強いてあげればロッテの球団社長時代にチームキャプテンや選手会長として接した、鈴木大地内野手(現東北楽天ゴールデンイーグルス)が「静岡県の出身でしたね」と苦笑いする。ゆえに今回の転身は、野球界だけでなくサッカー界をも驚かせた。 昨シーズンも黒字が見込まれているロッテは、潤沢となった資金を駆使してこのオフに大型補強を行っている。その成果を球団社長として見届けたい思いはあったのか――こう問われた山室氏は、昨年末の退任をジョークまじりに、笑顔を浮かべながら「大政奉還ですね」と位置づけている。 「もちろんそれ(球団社長続投)もありましたけど、僕は外部から来た人間なので。一番美味しいところは、やはり親会社から来た方に」 これもジョークまじりに、退任を「FA宣言しました」と表現していた山室氏のもとへは、ロッテで発揮された手腕を見込まれてさまざまな業界からオファーが届いた。スポーツ界からも別のJクラブや、プロ化を目指しているラグビー界のあるチームからのそれも含まれていた。 「スポーツ業界にはこだわっていませんでしたけど、経験を最も生かせるという意味でも、自分を一番評価していただいたという点でも、ほぼ即決に近かったですね。新しいチャレンジをしたいと考えていたなかで、サッカーどころのエスパルスならば面白い、と思えたことが一番大きかったですね」