【バレー】日本一にも「自分、何もしてない」と嘆いた水町泰杜は完全燃焼できたのか? 学生生活最後に味わった“あの感覚”
「早稲田のいいところが全部出た」と振り返る全日本インカレ決勝
今年の「第76回秩父宮賜杯全日本バレーボール大学男子選手権大会」(以下、全日本インカレ)で10度目の優勝を飾った早稲田大。エースでキャプテンの水町泰杜(4年)は大会を終えた直後、あっけらかんと口にした。 【ギャラリー】全日本インカレを戦い抜いた水町泰杜 そのセリフを聞いたのは、実に6年ぶりだろうか。全日本インカレを終え、報道陣の取材に応えたあと、こちらを見るや水町は開口一番に嘆いた。 「自分、何もしてないっス!!」 コート内で見せる表情と同じように、白い歯をのぞかせる。決して謙遜しているわけでも、必要以上に下手に出ているわけでもない。おそらくは素直な心境だ。 もちろん、何もしていないわけではないのは誰もがわかっている。キャプテンとしてチームを率い、エースとして得点を重ねた。それでも、当の本人はそう言わずにいられない。 あのときもそうだった。鎮西高(熊本)に入学し、1年目からレギュラーに抜擢されると、2学年上のエース鍬田憲伸(現・サントリーサンバーズ)の対角に入り、非凡な才能を発揮。その年のインターハイと春高の高校二冠に貢献している。だが、このときを水町はこのように振り返ったものだ。 「憲伸さんが全部決めてしまうんで。自分は何もしてないんです」 この年以降の高校2年間は堂々とエースの役割を担って過ごした。大学生活でも、チームに勝利をもたらす要素となることを自身の役目として胸に留めていた。 けれども、大学カテゴリーでの最後の公式戦である全日本インカレでは同級生やレギュラーの下級生が高い貢献度を示し、他を圧倒する戦いぶりで頂点まで駆け抜けた。 「みんな、いい顔していましたよね。特に決勝では早稲田のいいところが全部出たな、とすごく思います。ほんとうにみんな、すごかった」
仲間が頼もしかったゆえに 抱いた物足りなさ
頼りがいのあるチームメートに囲まれた大学4年目。そのことへの感謝は尽きないが、同時に、それは水町にとって不完全燃焼に終わる一因にもなった。 「僕自身の感覚的には、気がついたら優勝していた、というぐらい。それだけ同期や後輩たちがやってくれたということだし、そこに懸けてくれた思いをすごくうれしく感じます。 でも、自分は何もしなかったな、こんなに何もしない大会があっていいのか!? って(笑)」 全日本インカレが始まって早々に背中に痛みを覚え、低調なパフォーマンスが続いたのは事実だが、「それも影響しないぐらいでしたから」と本人は苦笑い。それもあってだろう。1週間後に控える天皇杯全日本選手権大会ファイナルラウンドへの意気込みをたずねると、意気揚々と語った。 「天皇杯が頑張りどころかなぁ。何もせずに全日本インカレが終わって、僕自身は(完全に)燃焼していないので。ひょっとしたら同期は、これで満足しているかもしれないけれど(笑) それに、勝ち上がれば早稲田のOBがたくさんいるジェイテクトと戦えるので!!」