ピアノや音楽祭への思いを語る加藤さん

　来年50周年の節目を迎える大分県由布市の「ゆふいん音楽祭」を開始当初から支えてきたグランドピアノが、老朽化で悲鳴を上げている。市は、新たなピアノの購入資金などにしようと、ふるさと納税の仕組みを通じて寄付を募る「ガバメントクラウドファンディング」（GCF）を始めた。目標額は2000万円で、関係者は「これまで以上に音楽を通じた交流を図っていきたい」と協力を呼びかけている。期間は来年2月23日まで。（石橋龍馬） 【写真】同じ大分県の「別府アルゲリッチ音楽祭」で演奏を披露する出演者たち

　市などによると、音楽祭は1975年春の県中部地震による観光低迷を吹き飛ばそうと同年に始まった。演奏家はほとんど無償で出演し、運営もボランティアが支えてきた。2009年を最後にいったん幕を閉じたが、16年の熊本地震で落ち込んだ観光需要を取り戻そうと、同年に復活した。

　当初は行政主体だったが、数年で地元住民に移行し、全国で最も古い民間主体の音楽祭の一つとなっている。

　湯布院公民館（ゆふいんラックホール）内に置かれているピアノは音楽祭が始まった当時から使われ、小林道夫さんや津田裕也さんら、著名なピアニストも鍵盤をたたいた。

　ただ、製造から約60年がたち、オーバーホールと呼ばれる大規模補修や定期的なメンテナンスはしているものの、音質の劣化が著しく、使用に耐えられる状態ではないという。

　音楽祭実行委員長の加藤昌邦さん（78）は「見た目は修繕できれいになっているが、プロのピアニストの演奏に応えることができなくなっている」と残念がる。

　プロジェクトは、音楽祭と「湯布院映画祭」がともに50周年を迎えることなどから始めた。「ピアノ購入・こども向け音楽イベント等を開催し地域を盛り上げたい！」と題して実施。集まった寄付は、コンサート用の国産ピアノ（約1000万円）の購入のほか、子ども向けの音楽イベントや、新ピアノでの若者向けコンクール、著名な音楽家による公開レッスンなどの事業を計画している。