「新しいジュビロの歴史を作る」失言がちな王様小学生がクラブ幹部へ。藤田俊哉の磐田革命
――ヨーロッパでは、選手の社会的な地位も高く、同時に選手自身が社会的な動きをすることも多いですよね。 「ヨーロッパは選手が社会と非常に近いという印象がありますね。選手はリスペクトをされているけれど、変にスポイルされてもいない。同時に選手も、社会の一員、市民のひとりだという意識を持っている。ボランティア活動や社会貢献という行動をとる選手も多いしね。教育の違いもあるのかもしれませんが、ヨーロッパで、選手の意識の違いは、本当に勉強になりました」 ――現役引退後、日本では指導者を目指すことが主流ですが、ヨーロッパではその進路が主流というわけではない。実際、選手時代の実績のない若い監督が活躍する状況もあります。 「監督でいえば、その仕事の数は選手よりも少ないですからね。限られたパイだから。20代で監督を目指す人が実績を積んで、活躍する傾向も増えてきました。ひと昔前は30代前半で現役引退するのが普通でした。現在は30代後半、日本では40代まで現役を続ける選手もいます。そこから、プロチームを指揮できるS級ライセンスを取得するのに5年くらいの時間が必要という現状の日本のライセンス制度は、見直す必要があるんじゃないかなと思っています」 ――選手が欧州で活躍する道が広がりましたが、指導者となるとまだ大きな壁がありますね。日本で取得した指導者ライセンスは、ヨーロッパでは使えない。藤田さんも引退後、オランダのフェンロVVVでコーチ業を務めましたが、ライセンスの課題が残りました。 「アジアでは日本のライセンスのトランスファーが可能です。ヨーロッパ内では不可能。日本とヨーロッパとでは、ライセンス取得の過程や条件などの違いもあります。僕が指導者としてオランダへ行ってから10年近くが経っているけれど、まったく改善されていないというのは、日本サッカー界での大きな問題だと思います」 ――トランスファーをできるようにするには、ヨーロッパや世界の基準に合わせたライセンス制度へと改革が求められることになるのでしょうが、それによって日本の指導者のレベルアップにもつながるかもしれませんね。 「プロへの指導もそうですが、育成年代の指導なども変わっていく可能性はあると思います。日本サッカーの底上げにもなるはずです。引退したプロ選手に限らず、サッカーに従事する人たちが、指導者として世界で活躍したいという高い目標を持てることになると思っています」