「新しいジュビロの歴史を作る」失言がちな王様小学生がクラブ幹部へ。藤田俊哉の磐田革命
良いフットボール、良いフットボーラーという理想を常に示す
――以前、ハンス・オフト監督のもとでプレーしていたジュビロ時代に「清商で名波さんは外国人コーチから褒められていたけど、俺は違った。その理由がなんとなく理解できた」という話をされていました。 「高校時代、ブラジル人コーチがいたんです。僕も名波もほめてもらいました。『ボールを持っているときの俊哉はすごい。名波はボールを持っていないときにすごいんだ』と。そのとき、ボールを持っていないときの評価があるんだと初めて知ったんです。田舎の自然発生のような、野生児のサッカー少年だからね。ボールは全部俺に出してくれというようなヤツだったから、無理もないんだけど(笑)」 ――ボールのないところの重要性を理解するのは、プロになり、オフト監督のもとでプレーしてから? 「24歳。ちょっと時間がかかってしまった(笑)。僕が選手時代、そして引退後にヨーロッパで身につけたことを、今の選手にはいち早く伝えたい。無駄な時間を選手には使わせたくないから。戦術が進化するなかで、良いフットボール、良いフットボーラーというのが変わってくる部分もあるけれど、価値観や理想形というものを常に示していきたいと思っています」 ――現役選手としての目線を今も持ち続けている? 「現役選手が一番だと思っているから。現役選手が一番良いに決まっている。だけど、その時間は限られているから、その時間を大事にして、思いっ切りやってほしい。『やめた俺が言うんだから間違いない』と選手にはいつも言っていますよ。『君たちが一番良いんだから、そのためのサポートを全力でするよ』と」 ――プレーヤーズファーストという言葉が、一般的にも繰り返されるようになってきましたが、藤田さんの中ではそれが染みついている。 「そうですね。あえて言わなくても良いくらい。一番であるからこそ、選手はそれを自覚し、覚悟を持ってほしい。やるべきことも少なくないし、プレッシャーも大きいだろうけれど、それはすごく幸せなことだとわかってほしい。これは引退したOB、先輩だから言えることだと思っています」