“公道を走るレーシングカー” シビックTYPE R 欧州でデビュー
前モデルに引き続き、欧州版のシビックはフィットのシャシーが使われているため、TYPE R 専用にリアサスペンションを再設計でもしていない限り、リアはカップルドビームの車軸式サスペンションになるだろう。 こちらの能力も少し心配なところだが、今や電制デバイスによっていかようにも車体制御は行える。むしろリアのイン側にブレーキをかけてアンダーステアを消すような制御が行われたりする時にはホイールの位置決め剛性が高いカップルドビームの方が優位な場面もありそうに思う。 もちろんアーム自体やその取り付け部の剛性向上にある程度の手立てが講じられていることが前提だ。タイヤサイズから言って、通常モデルの部品をそのまま流用できるとは思えないから、そのあたりのケアはおそらく大丈夫だろう。
時速200キロからの加速は「別世界」か
そうした制御でどうにもならないオーバーパワーに対する処方箋はドイツ系のハイパフォーマンスモデルと同様に、電制で抑え込む様に仕立ててあるはずだ。というより310馬力を自由に発揮させたらトラクションが不足してクルマは走れない。近年のハイパワーカーの常識から考えて3速まではいくらアクセルペダルを床まで踏もうが、電制スロットルは全開にならない設定になっていると思われる。獰猛過ぎるエンジンにはがっちりと首輪がかけられているのだ。 そういう意味で、TYPE R に与えられた新開発の2.0L VTEC TURBOエンジンのポテンシャルを発揮しようと思ったら少なくとも時速150キロ以上の領域になってくるだろう。本領ということになれば時速200キロから上だ。おそらく時速200キロからの加速はこれまでの TYPE R では見ることの出来なかった世界になるはずだ。少し前であれば12気筒フェラーリやポルシェ・ターボの世界だとも言える。 限定で輸入された先代モデルの価格は300万円ほどだったが、今回は内容が充実した分当然高くなるだろう。多分350万円ライン。となるとサーキットのことだけを考えるならホンダエンジンを積んだ中古のF3が買える値段になるが、こちらはナンバー付き、公道も走れる。ただ公道のことだけ考えるならもっと常識的な速度域で楽しめるスポーツカーが沢山ある。ただ、とにもかくにも激辛で、F1のホンダがサーキットをターゲットに開発したクルマでどうしても公道を走りたいという人には他にない選択肢なのだと思う。 (池田直渡・モータージャーナル)