“公道を走るレーシングカー” シビックTYPE R 欧州でデビュー
レーシングカーを公道で走らせる“首輪”
310馬力のFF車となれば、そもそも真っ直ぐ走ることが難しい。詳細は不明ながら TYPE R はフロントに「デュアルアクシスストラットサスペンション」なる機構を採用して「コーナリング時の安定性やステアリングフィールの向上」を果たしたのだと言う。 エンジンとミッションが隣合わせに並ぶ「ジアコーサ式」FF車では、パワープラントからの出力取り出し位置が、車両左右方向の中心とどうしてもずれる。そのため左右のフロントドライブシャフトの長さが不等長になる。ホンダでは車両進行方向で見て左にエンジン、右に変速機だったので、トランスミッションと一体になったデフから生えるドライブシャフトは右が短く、左が長かった。 左右で長さが変わればミッション側、ホイール側共に等速ジョイントの角度に差が生じる。右は角度が深く、左は角度が浅くなるわけだ。角度が変わると構造的にジョイントのトルク伝達効率が変わるため、左右輪に分配される力に差が出来てトルクステアが発生するわけだ。 かつてホンダでは、長い左側のドライブシャフトを2分割した上で、途中までデフから真っ直ぐ引っ張り、左右の長さが同じになる位置にジョイントを設け、ドライブシャフトの長さと角度を左右で揃える「等長ドライブシャフト方式」を採用していた。トルクステアを軽減するためだ。 今回のダブルアクシスストラットサスペンションは、単語をなぞる限り二本の中心軸をもつという意味になる。2分割したロアアームの幾何特性によって、フロントタイヤのキャンバー変化を抑制するような仕組みがあるのかもしれない。もやっとした向こう側に何かの答えがおぼろげに見えるような気がするが、実際にどういう機構なのかはメーカーの発表を待ちたい。 ただし、こうした機構の採用は、有り余るパワーに対してタイヤを含むフロントサスペンションの能力がプアであることの証明でもある。今回は19インチホイールに235の35扁平という一昔前のスーパーカー級のタイヤを履かせているが、常識的に考えてそれでもフロントの接地力は足りないはずだ。