「誰も性暴力の被害者・加害者にしない」Z世代起業家が手掛けるジェンダー教育【SISTERS・鈴木彩衣音】
「事業リーダーをやりたい」社長に直談判
ジェンダー・ギャップの課題を解決したいと思いながらも、方法が分からないまま大学に入学。大きな転機となったのがソーシャルビジネスとの出合いだ。 ある日、渋谷のスクランブル交差点を歩いていると、たくさんの広告が目に入った。「広告を社会課題の認知向上に使えるのでは?」そんな考えが頭によぎる。大学の教授に嬉々としてアイデアを話しに行くと、「ソーシャルビジネスっていうのがあって……」と教えられた。ビジネスでジェンダー・ギャップの課題が解決できるかもしれないと考えた鈴木は、学生時代をビジネスの勉強に捧げることを決めた。 しかし、いざビジネスを勉強しようにも、ジェンダーとビジネスを組み合わせためぼしい企業のインターン募集が見つからない。そこで、思い切って自分で事業を立ち上げることにした。 同じような志を持つ友人と、生理やPMSをサポートするサプリメントのサービスや、企業に対し若年層の女性向けのマーケティングコンサルを提供するサービスなどを運営。学生ながらも、若年層向けコンテンツを制作する名だたる企業と仕事をした。忙しい毎日は刺激的で、学びが多かった。一方で、当初の目標であるジェンダー・ギャップの是正からは少し軸のずれた活動を続けることに葛藤もあった。 「うまくいっているし、楽しいけれど、自分の芯の部分が抜けている感覚がずっとあって。悩んだり気分が落ち込むことが多くありました。 マーケティングやコンサルの分野で入社のお誘いをいただくこともありましたが、『私がやるべきことはこれなのか?』という葛藤が大きかったので、就職は辞めようと考えていました」 大学卒業後の進路が見つからないまま、大学4年生を迎えた。自分で起業するしかないだろうと考えていた時、またもや運命的な出合いを果たす。 新卒も積極的に採用しながら、ソーシャルビジネスで多くの起業家を輩出しているボーダレスジャパンを見つけたのだ。 当時のボーダレスジャパンには、1年間で起業家を目指す訓練ができる起業家採用の枠があった。起業家としてのスキルと自信を身につけるため、鈴木は同社への入社を決めたのだった。 入社後は1年間をかけてクラウドファンディング事業の立ち上げから運営までを担当。この事業を担当するにあたって、起業家としての意思決定能力をつけたいと考えた鈴木は、社長に対し、事業リーダーをやりたいと提案した。結果、事業に関わるメンバーが持ち回りで事業リーダーを担当する「メリーゴーランドCEO制度」が作られたのだった。新卒1年目ながらも、着々とリーダーシップを伸ばしていった。