ドコモと石川県が復興・地域活性化で包括的連携協定、注力する領域とは
NTTドコモは26日、石川県と包括連携協定を締結した。1月の能登半島地震、そして9月の奥能登豪雨からの復旧・復興に加えて、石川県の活性化を目指すというものだ。 【この記事に関する別の画像を見る】 協定では「被災地支援や被災者に寄り添う情報発信」「防災DXの推進」「通信環境の強化」といった目的が掲げられ、具体的に5つの施策項目が挙げられている。 ドコモと石川県の協定における5つの施策 次世代通信(HAPSなど)による通信インフラ強靭化 「HAPS活用に向けたパートナーシップ検討」(2024年下期) 石川県でのHAPS商用提供(2028年度以降) 地域モビリティの強化・高度化による持続可能な社会の実現 新たなユースケースとソリューションの検討および一部地域での実証(2025年度)、一部地域での実装(2026年度) 地域コミュニティ活性化支援 能登サポート拠点10カ所へのデジタルサイネージ設置(2024年12月以降) デジタルサイネージでの情報発信(2025年度) ドコモショップによる地域防災力強化 ドコモショップ輪島店にてデジタル防災教室開始(2024年12月以降)し、石川県内26店舗へ拡大(2025年度) 石川県全域のドコモショップ26店舗に食料などの非常用品を配備し防災拠点化(2024年12月以降) ドコモグループボランティアによる被災地応援 グループ社員のべ400名を派遣(2024年11~12月) 次回派遣継続検討(2025年1月以降) 全国のドコモグループオフィスでの石川県名産品出張販売などによる応援消費キャンペーン実施 ドコモ北陸支社長の出井京子氏によれば、ドコモが進める自治体との連携のなかでも、今回の石川県との協定は、2024年に発生した災害を踏まえ、復興防災にかかる連携は初めての取り組み。あらためて出井氏に締結に至る背景、そして今後の取り組みを聞いた。 ■ 課題は人口減少 2023年に北陸支社長となり、自身にとって初めて地方で暮らすことになった出井氏は、北陸支社が担当する富山県・石川県・福井県において、地域とのコミュニケーションを進めながら、通信ネットワーク、ドコモショップ、そしてNTTコミュニケーションズ北陸支社長の山本章博氏とともに法人向けサービスなどに取り組んでいる。 そんな出井氏が語る地域の課題のひとつは、やはり人口減少。若年層が離れ、地元で働く人が減れば、生産人口も当然減り、北陸に根ざす伝統文化の担い手もいなくなりかねない。「ドコモとしてできることは、やはりDXの推進」と語る出井氏は、人口減少がもたらす影響のひとつに「モビリティ」を挙げる。 出井氏 「クルマがないとどこにも行けない状態になる。中長期にわたって、ここで暮らす方々が豊かに暮らすため、ドコモがテクノロジーを通じて何ができるのか……『これだな』と思ったのがモビリティ。高齢になって運転免許を返納すると病院も買い物も非常に不便になる」 26日に締結したドコモ・石川県の協定での取り組みのひとつに「モビリティ」が含まれるのは、まさに出井氏が指摘する課題を解決するための取り組み。NTTコミュニケーションズの山本氏によれば、路線バスの代わりに、AIがニーズの高い場所を自動的に走行ルートを選ぶデマンド運行バスを羽咋市で実証しており、奥能登でも関心が高まっている。 ■ HAPSで半島をカバーせよ 人口減少は日本全国で挙がる課題でもあり、自動運転やAIを活用する公共交通といった施策もまた石川県だけではなく各地で進められている。 一方、取材を通じて能登半島で浮き彫りになった課題は「半島」という地形がもたらす要因。出井氏は、1月の能登半島地震で道路網が寸断されたことから、「復旧に向けて活動する際、行きたいところまで、なかなか届かないことがあった」と振り返る。 まさにそうした状況に向けた施策と言えそうなのが、「次世代通信(HAPSなど)による通信インフラ強靭化」とされるもの。両者で検討した上で、2028年度以降の石川県でのHAPS(基地局装置を搭載し、高高度を飛ぶ無人飛行機)の商用提供を目指す。 HAPSは今まさに開発中の新技術であり、実現するまでは「Starlink(スターリンク)」のような衛星通信の活用が想定されるが、出井氏は、いつか訪れるHAPSの商用化の暁には「24時間365日、サービスを提供できれば」と期待を寄せる。 このほか、両者の協定で進められる「デジタルサイネージ」は、「平時の設備を有事に活用する」事例のひとつ。山本氏によれば、災害発生時の避難所では、発災直後であれば「物資」「お風呂」といった情報が求められ、時間がある程度経つと罹災証明書の取得方法などを知りたくなるなど、ニーズが変化していく。 これまではそうした情報をホワイトボードに書き込んで掲出していたが、避難所となる場所や役場にデジタルサイネージを設置し、普段は生活に役立つ情報などを表示しつつ、いざとなれば災害対策関連の情報を一斉に配信する。「平時から活用していなければ有事には使えない」(山本氏)ものであり、持続性を追求した取り組みと言える。 出井氏は、地震・水害の被災地では土砂をかき出すことなど、依然として人手が足りていないことが課題のひとつと説明。協定を通じて、通信サービスはもちろん、モビリティや情報発信など幅広い分野で、中長期的な支援に取り組んでいくと語っていた。
ケータイ Watch,関口 聖