獣医師らが山林を切り開き放牧場整備、育てた馬・羊・豚を食品に…ふるさと納税返礼品として人気
山梨県大月市が財源確保策として力を入れるふるさと納税を支えようと、同市出身の獣医師らが市内に放牧場を整備して馬や羊、豚を飼育し、返礼品用のラムチョップやソーセージ、しゃぶしゃぶ肉などに加工、提供する事業が好調だ。ふるさと納税サイトに掲載すると、すぐに品切れになる人気商品もあるという。(吉田尚司)
事業会社は、元県職員で獣医師の條々和実さん(72)と、小学校からの友人で元銀行員の小泉幹成さん(72)が昨年6月に設立した「大月のびのびファーム」。今年1月から返礼品として食肉製品を提供している。
2人は4年前から、中央道沿いの山林約1600平方メートルを切り開き、放牧場を整備した。イノシシなどの侵入を防ぐため、放牧場の周囲に穴を掘って丸太の柵で囲ってある。重労働だったが、同窓生6人が手伝ってくれたという。
同社は、羊や豚、馬を仕入れ、3か月~半年ほど太らせた上で、在庫状況を見ながら専門業者に加工を委託し、商品化している。豚と羊は県内産で、放し飼いにすると肉質が良くなるという。
返礼品には、馬と豚の肉を合わせた「馬豚(ばとん)ソーセージ」もあり、好みによって豚・馬各50%、豚30%・馬70%の2種類から選べる。馬肉が多いほど食べ応えがあり、馬豚に羊を加えたソーセージも開発中という。
ラムチョップは人気の返礼品だが、羊の仕入れ頭数が限られるのが課題。馬刺しやしゃぶしゃぶ肉、ソーセージなどは大月市内の一部飲食店で扱っている。
市も食肉製品を返礼品の目玉として期待しており、これまでに牧場整備費として100万円を助成した。のびのびファームに今年入社した甲府市出身の武川雄一さん(49)は食肉の加工処理技術を有し、事業の将来を担う存在で、市は今年、武川さんに地域おこし協力隊員を委嘱した。
小林信保市長は「返礼品として果実や魚介類、米などが魅力的だと思っていたが、肉が手に入った。これからもっと扱い量を増やしてほしい」と期待する。