デバイス携帯時代の移動に寄り添う「オブジェクツ アイオー」 iPhone16ケースは9月下旬発売
“1人のため”が“多くの人のため”に
WWD:現代人のライフスタイルに根差した製品開発では、ユーザーを徹底的にリサーチする必要があると思うが?
角森:これは自分たちのモノ作りで一番重要なことでもあるが、ペルソナを立てるようなターゲティングはせず、“実在する特定の個人”のために製品を作る。以前、デジタルやファッション領域で活動する市川渚さんのために、カメラバッグを開発した。市川さんが求める機能性やファッション性を徹底的に追求した、一人のための製品だったのが、彼女の価値観や感性に共感するファンにも広まり、多くの人に届いた。これがきっかけで、“実在する特定の個人”のための製品制作に面白さを感じ、自分のスタイルとして落とし込んでいった。とはいえ、オーダーメイドをしたいわけではないので、一般的なニーズとのバランスは取るようにしている。
WWD:元々ランドセルの職人だったのに、現代人のライフスタイルに焦点を置いた製作を始めたのはなぜ?
角森:デジタルデバイスが好きだからというのはベースにあるが、クラシックなものがこの先もあるかどうか、わからないというのも理由の一つ。文化として強く根付いているランドセルは簡単に無くならないと思っているが、 50年後、100年後に残っている保証はない。クラシックなものを職人として守り続けるよりは、テクノロジーと共に進化するモダンなものと繋げて、今生きている人たちのテンションが上がるものを作る方が楽しいと思った。
旅が広がり始めた19世紀、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」はトランクを再開発し、結果世界中の人々を旅行に駆り立てた。現代人の移動をアップデートすれば、それと似た現象が起こるかもしれない。クラシックなものを無にする訳ではなく、むしろそれを進化させて、現代人のライフスタイルに落とし込み、“大きな変化”が起こるきっかけになるモノ作りを目指している。