水素社会の実現に向けてトヨタとUCCが組む理由
トヨタとUCCグループは、CO2排出ゼロの水素社会の実現に向けて協働している。 これまでにも数々のイベントで足並みを揃え、トヨタは水素自動車「ミライ」を、UCCは水素焙煎したコーヒーをそれぞれアピールしてきた。 10月8日、「UCCグループサステナビリティレポート2024」の発刊を記念して開催されたメディア向けイベントに招かれたトヨタ自動車の濱村芳彦水素ファクトリ―チーフプロジェクトリーダーは「足元では水素代が高いとか水素ステーションが少ない・使えないといった問題があるのだが、将来、みんなが住みやすい地球をつくるというビジョンを夢見て続けることが非常に大事」と語る。 水素自動車だけでは水素社会の実現はなしえないことから今後もUCCと歩調を合わせる。 濱村氏によると、自動車が走行中に排出するCO2は既に全体のCO2の2割を切り、全ての車の燃料が全て再生可能なエネルギーに置き換わったとしても2割しか改善されない。 一般的に自動車用燃料はほぼ自動車でしか使えないが、自動車用水素に関する技術は様々な分野での応用が可能。このような観点からUCCに期待を寄せる。 「みんなが同じ方向を向くことが非常に大事。生活のどこにでもあるコーヒーのビッグネームであるUCCさまと一緒に仕事をさせていただくというのは、例えば車の中でコーヒーを飲んだときに思いが同じになる可能性がある」と述べる。
一方、UCCは、水素を熱源とした焙煎とこれまで培ってきた焙煎ノウハウを組み合わせることで、従来の熱源では実現できない“水素焙煎ならではのおいしさ”をつくり出すことに成功した。 UCCジャパンの里見陵執行役員サステナビリティ経営推進本部長は「研究途中のものも多数あるが、ガスと比べて、超弱火から強火までの熱のかけ方で非常に幅が出せる。水素しかできない焙煎プロファイルにより、特に酸味があるフルーティーなコーヒーはよりフルーティーに飲めることを技術的に確認した」と説明する。 現在、UCCでは小型のテスト焙煎機で実証研究を重ね、2025年4月にレギュラーコーヒー製造の主力工場「UCC富士工場」で、世界初の試みとして大型水素焙煎機で水素焙煎コーヒーを量産して本格販売していく。 「焙煎工場の動力源は電気とガスがほぼ半々。富士工場で焙煎機1台あたりのCO2排出量は年570トン。これが水素焙煎機に置き換わるとゼロになり大きなメリットがある」とみている。 水素焙煎機で使用する水素は、再生エネルギーをベースとした電気で水の電気分解を行ってつくられるため実質的にCO2フリーの熱源となる。 水素の調達コストが高い点に対しては、“おいしい。しかも環境にいい”の価値訴求に徹する。 「おいしさをしっかり伝えて付加価値を購入のきっかけにしていただくのが大きな課題。ホテルや交通機関などCO2削減に意欲的な企業様と一緒になってアピールしていくのも手」との考えを明らかにする。