世界初「折りたたみスマホ」の中国メーカーが破産、かつてのユニコーンは負債1000億円に
事業戦略を誤り、量産化に失敗
柔宇科技にとって上場の失敗は外因に過ぎず、量産化の失敗という内因が破産につながった。技術革新には成功したが、量産化を進める中で度重なる困難にぶつかった。 同社のULT-NSSP技術は性能面で優れているが、量産するには歩留まりが低く、生産コストを押し上げる。また事業戦略を誤り、「第二のサムスン(Samsung)」を目指して独自開発と生産を進めたため、提携パートナーとなるはずだったスマホメーカーがライバルとなってしまった。 製品は先進的な技術を採用していたが、売れ行きは予想に届かなかった。FlexPaiの発売後も市場の反応はいまひとつで、価格の高さやかさばるデザイン、使い勝手の悪さなどに批判が集まった。対照的に、サムスンやファーウェイといった大手メーカーがその後発売した折り畳みスマホは、柔宇科技をはるかに上回るデザインやマーケティング戦略で、急速に市場シェアを広げた。 また、柔宇科技の強みとも言えるフレキシブルディスプレイ技術をめぐって、業界内で激しい競争にもさらされた。京東方(BOE)や維信諾(Visionox)といった中国メーカーの技術進歩により、柔宇科技の優位性は次第に失われていった。 2021年になると、フレキシブルディスプレイ技術のソリューションサプライヤーに特化するよう事業戦略の見直しを迫られた。同社の技術ソリューションは複数の業界で活用されていると発表しているが、実際の販売枚数は年間6万枚に満たず、京東方の8000万枚を大幅に下回った。 社内の経営問題も隠れたリスクとなっていた。同社は調達した多額の資金を投じて、超大型工場の建設や大量の人材採用、大がかりなマーケティングなどを実施し事業の拡大を進めたが、売り上げがそれに見合って増えることはなかった。
スタートアップの失敗から得られる教訓
柔宇科技は、経営危機にコロナ禍や中国投資市場の冷え込みが重なったことで、人員削減や賃金未払いといった騒ぎを起こし、ついに2024年5月に破産を申請した。ニュースサイト・界面新聞(Jiemian News)の報道によると、同社は47億元(約990億円)以上の負債を抱え、未払い賃金は6000万元(約12億6000万円)を超えているという。 柔宇科技の没落によってフレキシブルディスプレイ技術が終わったわけではない。むしろ、サムスンやファーウェイといった大手メーカーが投資を続けていることは、この分野がまだ大きな発展の可能性を秘めていることを示している。しかし、新興テック企業は、新しい技術を開発する非常に大きなイノーベーション力に加え、ビジネスのセンスや経営力、リソース管理の能力が試されることを肝に銘じる必要がある。 *1元=約21円、1ドル=153円で計算しています。