是枝裕和「ホームドラマはもう卒業しようと思っていた」──Netflix シリーズ「阿修羅のごとく」1月9日に独占配信
Netflixシリーズ「阿修羅のごとく」が、1月9日に独占配信される。監督・脚色・編集を務める是枝裕和に訊いた。 【写真を見る】四姉妹を演じる、宮沢りえ、尾野真千子、蒼井優、広瀬すず(全12枚)
舞台は1979年の東京。ときに争い、口汚く罵り、泣きわめき、かと思えば、抱き合って高らかに笑う。女は阿修羅だ──。数々の名作ドラマを執筆し、日本のホームドラマの礎を築いた向田邦子。向田作品の中でも、最高傑作として名高いドラマシリーズが「阿修羅のごとく」だ。1979年のNHK版では、加藤治子、八千草薫、いしだあゆみ、風吹ジュンが四姉妹を演じた。 その「阿修羅のごとく」がNetflixでリメイクされる。主役の四姉妹を演じるのは、長女・宮沢りえ、次女・尾野真千子、三女・蒼井優、四女・広瀬すず。本作を監督・脚色してリメイクしたのは、『万引き家族』でカンヌ国際映画祭パルムドール(最高賞)を受賞した是枝裕和だ。企画・プロデュースを担当した八木康夫が記者会見で述べた「ホームドラマの最高傑作を、現代のトップ女優が演じ、最高の監督が描く」という大袈裟に聞こえる宣伝文句も、全話を試聴してみると、なるほど納得だ。 ──是枝さんにとって向田邦子は、「もっとも尊敬し、一番影響を受けた」と繰り返し語ってきた脚本家です。一番好きな作品としてたびたび言及してきたのが「阿修羅のごとく」でした。 テレビドラマに夢中になった1970年代、脚本家といえば向田さんと倉本聰さん、山田太一さんの3人が頂点でした。市川森一さんを加えれば、それがトップ4。幸いなことに倉本さんや山田さんとはお会いすることができて、創作についていろいろ話を伺うことが出来ましたが、残念ながら向田さんとはできなかった。だからこそ、今回「阿修羅のごとく」をリメイクすることは特別なことだったんです。 ──監督にとって特別なドラマであり、脚本であると思うんですけど、「阿修羅のごとく」を初めて観た時に何を感じたのか、当時を振り返っていただけますか。 オンエア当時は全話は観られていなくて、少し後にふり返りで観ているんですよね。この時代は、倉本聰や山田太一のドラマにハマっていました。『寺内貫太郎一家』あたりは、向田邦子作品として意識して観ていたわけではなかったんです。むしろ、倉本聰の『前略おふくろ様』、山田太一の『早春スケッチブック』や『想い出づくり。』、あの辺が僕のドラマの原体験で、一番核になった部分ですから。自分がこの仕事を志そうと思った出発点でしたね。 ──となると、向田作品として意識したのは? 向田さんが亡くなった後、彼女の書いた文章と作品にきちんと向き合った時にハマりました。彼女が書いたものやドラマが、自分が創る上でのお手本にもなっている感じです。