“ファッション=テニス”ビームスが手掛ける新ブランド「Setinn<セットイン>」とは。ディレクター新井伸吾に聞くテニス界に参入したワケ【テニス】
セレクトショップの草分け的存在の「ビームス」がテニスの新ブランドを発表。その名は「Setinn<セットイン>」
ラコステやフレッドペリーと広く知られているファッションブランドの創業者はプロのテニスプレーヤー。見ない日はないと言っても過言ではない老若男女に愛されるスニーカー、アディダスのスタンスミスもまた往年の名テニスプレーヤーであり、テニスとファッションの関係は深い。そのテニス界に、セレクトショップの草明け的存在「ビームス」から新ブランド「Setinn<セットイン>」が登場した。 【画像27枚】オンコートとオフコートを繋げる!90年代を彷彿とさせるセットインの提案 24春夏コレクション 「ビームス」は、2020年にトッププロの愛用者も多いグリップテープでよく知られているアメリカのテニスブランド「TOURNA(トーナ)」や、2022年にマイケル・チャンやマリア・シャラポワらも使用した「Prince(プリンス)」とのコラボ商品を発売。ブランド哲学を崩さず、新しいアイテムを世に生み出してテニス愛好家以外からも好評を博した。 これらテニスとファッションをつなげてきたのが、「ビームス」でバイヤーを務め、今回「セットイン」のディレクターとなった新井伸吾さん。小学生の頃からテニスに触れ、高校ではインターハイ、大学ではインカレ出場と全国レベルの腕前を持つ。 テニスの伝統的な部分を重んじたクラシカルなデザインでありながら、オンコートでの使用も可能な機能性を兼ね備えたという「セットイン」。すでに全国選抜高校テニス大会で審判団の公式ユニフォームとして提供したり、元女子世界ランク70位の尾﨑里紗も着用したりとテニス界に足を踏み入れている。 タイムスリップしたかのようなどこか懐かしさを感じさせる一方で現代のファッションをも取り入れたテニスウェア。一体、どのような思いで新たなブランドを立ち上げ、テニス界に乗り込んだのか。きっかけやブランドが目指すところ、ウェアのこだわりなどディレクターの新井さんにその思いを聞いた。 ――セットインができたきっかけを教えてください。 「定期的に海外も含めてテニスの試合見るようにしていたんですけど、『あれっ、テニスウェアがダサい』と思ってしまったんです。自分もテニスに夢中になっていたからわかります。選手としては着方もわからないし、着せられている感がある。『あれじゃあ憧れないよね』と半分ディスに近い思いがありました」 ――今は契約メーカーから数パターンのウェアが提供され、1つのコートで2人の選手が同じウェアを着ていることも少なくありません。 「今のテニスプレーヤーに個性を感じない。僕はこれまでテニスでインカレまで出場してビームスに就職しました。こうやってバイヤーになり、いろんな洋服を作らせてもらって別注企画を任せられるようになったときに、どこかモヤモヤみたいなのがテニス界にあったんです。次第にそのモヤモヤが強くなって、人とのつながりの中で偶然、プリンスの別注企画をやらせてもらいました。それが名器と言われるグラファイトの別注で売れたんですよね。そこからビームスの洋服でもテニスに通用するかもと。それが一番最初のきっかけで、しかも服を作ろうとは思ってなくテニスクラブが欲しいと考えていました。すでにたくさん洋服を作らせてもらいましたし、モノ売りじゃなくてコト売りに興味を持ち始めていたんです」 ――テニスクラブというと? 「架空のテニスアカデミーをすべてビームスで作ること。クラブにはセンターコートがあってプレーできる場所があるんですけど、カフェやセットインの物販、ビームスTのアートワークになっている壁打ちがある。洋服の仕事をしていると、意外とテニスコートって使える。だから映えているテニスコートがあれば、それでも貸せるなとか想像を膨らませていました。とにかく一日いられる場を作りたかったんです」 ――いままでのテニスクラブだとどうやって会員を増やすか、レッスンやコートを貸すかが主だと思います。目的がまったく異なりますね。 「テニス界の人は『テニス界を変えたい』と言うんですよ。でも、同じ角度からしか見ていないので、あれでは変わらない。でも、僕らはアパレル業界から来た。まったく景色が違くて、良い意味でも悪い意味でも突っ込みどころ満載。全否定しているのではなく、もっと良くなるのになと。僕たちビームスだから見られるテニス界があり、携わることによっていろんな角度から変えられるなと思っています。ビームスという大きな会社だからこそ言えることですけど、これはチャンスだなと思ったし、テニスを続けてきた僕にしかできないなと思いました」