それなら〈公務員〉志望はやめておけ…進路指導のプロ、「地元に貢献したいから」「安定しているから」に“ド正論回答”
目指すなら「従来のような公務員」でなく、「先端産業を自らつくる公務員」を
公務員志望だと法学部や経済学部を考えがちですが、あえてここは工学部、そして農学部も新しい産業を生み出せる学問です。あるいは、そうした理系人材と組めるような総合大学に行く。 地元を愛するからこそ都会や他県の大学に行って学ぶ。江戸時代の維新志士は江戸や長崎まで学びに行ったでしょう? アメリカでもヨーロッパでもオセアニアでもアジアでも行けばいいのです。日本が失敗している面で成功している国も多くあります。自分たちの国がいちばん豊かで偉いという誤ったおごりを捨て、明治維新のときの日本人のように海外の先進事例から真摯に学ぶのです。自分に、自分の国に何が足りないのかをもう一度気づいて変わるしかありません。 海外留学も単なる語学留学ではなく、開発経済学や国際政治、コンピュータサイエンスなどの何か高度な専門性を意識した学びにトライしましょう。できればアルバイトではなくインターンシップを経験して海外で就業体験をするとよいでしょう。 そうして地元に帰ってくると、故郷の因習(いんしゅう)に阻(はば)まれて、好きなことができないことに気がつくでしょう。お役所の硬直化した体制や、地域で権力をもっている会社や組織、個人に阻まれて改革ができないなど、子どもの頃、高校で探究学習をやっているだけでは見えなかった、日本の地方の深刻な問題点です。これらが数十年にわたって地域を衰退させてきています。 安定を求めて公務員になってしまった将来のあなたが、古いシステムの居心地のよさに取り込まれ、都会や海外からせっかく来てくれた新しいことをやりたい人、東京から故郷に戻ってきてくれた人の足を引っ張り、失望させないことを切に望みます。誰もそんなことは望んでいないのに、なぜか地方ではそんなことばかり起きています(もちろん、成功事例もいっぱいあります)。 地域の役に立ちたいあなたが学ばなければいけないことはいっぱいあり、それを実現できるのは必ずしも公務員という道だけではありません。仮に公務員を目指すとしても、今までのような公務員ではダメだということは感じてほしいです。 山内 太地 教育ジャーナリスト、学校経営コンサルタント、教育系YouTuber 1978年岐阜県生まれ。東洋大学社会学部卒業。理想の大学教育を求め、日本全国約800大学をすべて訪問。海外は14ヵ国3地域約100大学を取材した「大学マニア」。大学・高校の経営コンサルティング業も行い、全国の高校で年間約150回の進路講演を実施。YouTubeチャンネルの総再生数は2,100万回を超える。 著書は『偏差値45からの大学の選び方』(ちくまプリマー新書)、『やりたいことがわからない高校生のための 最高の職業と進路が見つかるガイドブック』(KADOKAWA)など多数。