マイナ保険証「一本化」は“個人情報のリスク増大”や“憲法違反”の問題も?…専門家が警告「それでも強行することの危険性」とは
「任意取得の原則」との抵触と「医療アクセス権の侵害」の問題
マイナ保険証の一本化が、マイナンバーカードの任意取得の原則に違反するという問題点も挙げられた。 小島弁護士:「わが国の『国民皆保険』の下で、任意取得のマイナンバーカードを保険証にし、現行の保険証を廃止するとなると、事実上、マイナンバーカードの取得を強制することになる。 法的にはマイナンバーカードの取得は任意なのに、それに違反する」 それでもマイナンバーカードを取得しないとなると、国民皆保険制度であるにもかかわらず健康保険証を持てない人が出るおそれがあると指摘する。 小島弁護士:「国民健康保険の現行制度では、『市区町村は世帯主にその世帯の人の健康保険証を交付しなければならない』と決まっている(国民健康保険法施行規則6条1項)。何をしなくても保険証が届くことが当たり前になっている。 ところが、現行の健康保険証が廃止される12月2日以降は、マイナンバーカードを持たない人が医療機関に受診しようとすれば、何らかの書類が必要になる。 この点について、改正法では、『当該書面の交付の求めを行つた世帯主に対しては当該書面を交付する』と定められている(国民健康保険法(12月2日施行)9条2項)。 条文を素直に読むと、市区町村は『交付の求め』を行った人に資格確認証を出せばいいとなる。自分から申請して交付してもらわなければ、資格確認の手段がなくなってしまう。国民皆保険の制度の趣旨と矛盾する」 政府は、12月2日以降、マイナ保険証を持たない人のために、資格確認証を発行して送付するとしているが…。 小島弁護士:「市区町村は、住民1人1人について、マイナンバーカードを持ってそこに健康保険証を紐づけしているか、確認していかなければならない。 そのうえで、マイナンバーカードを持っていない人、または持っているが健康保険証を紐づけていない人には『資格確認書』を発行し、マイナンバーカードを持っている人には『資格確認のお知らせ』を発行しなければならない。 いずれの業務も、市区町村にとって大変な負担になる」 山崎医師は、この点に関連して、国民の「医療アクセス権」が侵害されるという問題があると指摘した。 山崎医師:「小島弁護士の指摘の通り、法律上は国民の側から『資格確認証』の発行を求めることになっている。 政府は、当面の間は求めがなくても『資格確認証』を発行するとしているが、いつまでかは明らかにされていない。また、そもそも『資格確認証』をきちんと受け取れるかもわからない。 保険診療を受けるのに無用の手間がかかるのは、憲法25条の生存権の一環として、必要な医療サービスをすみやかに受ける『医療アクセス権』を蹂躙(じゅうりん)するものだ」 ここでも、地方自治の侵害、つまり国が市区町村との協議を十分行っていないことの弊害が端的に表れているといえるだろう。